管理期保健師の実践は管理する小集団の業績に大きく影響を与えると考え、申請者らは、業績の向上と人材育成の両輪を考慮した自治体保健師の組織マネジメントに関する役割行動指針(以下、役割行動指針)を作成した。役割行動指針が示すコンピテンシーの獲得には学習プログラムが必要と考えた。成人学習者である保健師が経験からの学習能力を高めるためには、同じような立場の仲間(ピア)とともに支え合いながら関わりを持ち、学習者としてまた、学習支援者としての知識やスキルを身に着けていくピア・ラーニングを用いた学習方法が有効ではないかと考えた。本研究の目的は、自治体保健師の組織マネジメントに関するコンピテンシーの向上を目指し、役割行動指針を活用したピア・ラーニング・プログラムを作成することである。 2020年度は作成した学習プログラム案について教育工学の専門家からの助言を受け、研究班にて洗練させた。その後、国内学術集会にてワークショップを実施し、管理期保健師の人材育成の実態と課題について討論し、学習プログラムへのニーズや内容への示唆を得た。 2021年度には、約半年間の学習プログラムを3人の県保健師と5人の市保健師からなる2グループで実施した。学習プログラムは、概要や目的・目標、基盤となる理論、実施方法と内容、評価方法を記載した学習ガイドと記述式の学習ツールを活用し、4回の集合研修と各自の実践を組み合わせ実施した。管理期保健師としての組織マネジメントに関する自己課題に取り組み、成果達成の認識等から学習プログラムを評価した。 2022年度は学習プログラムの事後評価として、行動目標への取組みと学習行動を明らかにした。 評価結果から、作成した学習プログラムは管理期保健師の組織マネジメント能力の向上におおむね有効であり、学習を継続するにはフィードバックの機会の確保という環境づくりの工夫の必要性が示唆された。
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