本研究は、妊娠中の出産恐怖感、産後の出産体験を測定する尺度である出産への思い質問票(日本語版Wijma Delivery Expectancy/Experience Questionnaire: JW-DEQ)の短縮版を作成し、その有用性を検討することを目的としている。また尺度を用いて、妊娠各期の出産恐怖感が出産体験、妊娠・出産アウトカムや産後の心理状態にどのような影響を与えているか、さらに出産恐怖感に影響を及ぼす個人的要因と心理社会的要因を明らかにすることを目的とし実施している。 前年度までの既存データの解析と文献レビューから、医療者が提供したケアに対する妊婦自身の受け止めが、出産恐怖や出産体験に関連する重要な変数であることが明らかとなった。またケアの質を評価するための簡便な尺度がないことが明らかとなったため、オランダで開発されたケアの質に対する女性の認識を測定する尺度であるPregnancy and Childbirth Questionnaire (PCQ) の日本語版を開発し、妥当性・信頼性の検証をおこなった。 J-WDEQ短縮版作成は、Web調査で得られたデータを解析した。妊娠中期の調査に回答した者は761人、さらにその中で妊娠後期の調査にも回答した者は183人、産後の調査に回答した者は301人であり、最終的に721人を解析対象とした。項目反応理論 (Item Response Theory) を用いて、各項目の情報量を算出し、短縮版の項目を選定した。関連要因についても分析を実施し、今後成果を公表していく。
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