研究課題/領域番号 |
20K23133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中部 貴央 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90883645)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | Quality of Life / 介護 / 高齢者 / 組織文化 / 介護負担 |
研究実績の概要 |
本研究は、介護サービス利用者・家族介護者・介護職員の生活の質(QOL)と介護現場の組織文化を多施設調査により可視化し、相互の関係性の検証ならびに介護サービス利用者の高いQOLへの関連要因を明らかにすることを目的とする。介護サービス利用者のQOLは重要な介護の質指標の一つであり、さらに介護の担い手たる家族介護者・介護職員のQOL の影響も大きい可能性がある。さらに、医療の質と関連すると検証されてきた組織文化は、介護現場でもその質の基盤となりうる。 2020年度は、これまでの多施設調査結果に加え、新たに28事業所を対象に、利用者1254名、家族介護者287名、職員258名を対象として、無記名自記式調査を実施した。家族介護者は、通所介護事業所の利用者と同居している者に限定した(対象事業所は13事業所である)。各ステークホルダーのQOLはEQ-5D-5LやWHO-5を用いて、その身体的・精神的健康状態を可視化し、介護現場の組織文化は医療機関を対象とした組織文化に関する調査票(Kobuse et al., 2014)を介護現場向けに改訂し、信頼性と妥当性を確認した調査票を用いて可視化した。 また、これまでの多施設調査結果を踏まえて、介護職員の精神的健康状態と利用者のQOL、組織文化との関連の検討を行った。職員の不良な精神的健康状態(WHO-5スコア13点未満)を目的変数、組織文化・職場環境の各領域、職務満足、痛み、利用者のQOLを説明変数、性別、年代、職種、職位、労働時間、夜勤の有無、事業所形態を調整変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、介護事業所における職員と利用者の精神的健康状態の正の関連が明らかになった。介護職員の精神的健康状態が不良な割合が高く、とくに中間管理職が顕著に不良であり、今後精神面でのサポート体制をより重要視する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、介護サービス利用者・家族介護者・介護職員のQOLと介護現場の組織文化の相互の関係性を検討する計画であるが、すでに利用者と職員のQOLおよび組織文化の関係性を検討することができた。また、家族介護者への調査も新たに実施することができ、利用者と家族介護者、家族介護者と介護職員のQOLや組織文化との相互関係性の検討を行う準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、これまでの調査結果および2020年度に測定した調査結果を踏まえ、介護サービス利用者と家族介護者、家族介護者と職員のQOLおよび組織文化の相互関係についてさらなる検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染拡大に伴い、調査協力介護事業所への報告会等による訪問の機会がなくなり旅費が発生しなかったこと、調査費用・データ入力費用を当初の想定より抑えられたため。 使用計画:2021年度は、調査結果の分析、研究成果の発表(学会発表、論文発表)を中心に行い、それに関連する費用(学会参加費用、英文校正費、論文投稿料等)への支出を予定する。
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