【研究の目的】本研究は、ボンディング障害をもつ母親に直接面接し、育児中の思いとその後に続く育児行動を縦断的に分析することによって、ボンディング障害と虐待的育児の因果関係を解明することを目的としている。児童虐待防止は依然として重要な課題となっている。虐待的育児の要因は産後うつや育児不安であると考えられている。しかし、近年、ボンディング障害という新たな概念が注目され、虐待的育児に関連している可能性が報告され始めてきた。そこで、ボンディング障害と虐待的育児の関係を母親の体験から解明しようと考えた。 【研究実績の概要】文献レビューからボンディング障害に関する最新の知見を得、ボンディング障害のスクリーニング方法を選定した。研究参加者の面接調査については、COVID-19の感染症拡大の影響を考慮し、直接対面ではなくパソコンやスマートフォンを使用した遠隔での面接調査に切り替えて実施した。その結果、9名の参加者の面接が終了しこのあと3名の面接を予定している。現在、得られたデータの分析を進めつつ成果発表も同時に行っている。分析の結果、以下5点について明らかになった。①ボンディング障害と抑うつ状態が密接に関連していること、②ボンディング障害は母親の置かれた状況と条件によりその程度が変化すること、③母親のボンディング障害は母親の置かれた状況と条件により虐待的育児を引き起こすこと、④母親はボンディング障害を自覚し、どうにかしたいと願っている場合が多いこと、⑤ストレングスを活用することにより新たなボンディング障害への支援方法創出の可能性があること、である。今後は追加の面接調査を進めて分析結果を統合し、公表していく予定である。
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