研究課題/領域番号 |
20K23141
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
市川 勝 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70880566)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 失語症 / 意思決定支援 / 回復期リハビリテーション病棟 / 目標設定 / TalkingMats日本語版 / 権利擁護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟入院中の失語症者(Person With Aphasia:PWA)が、自身の意思決定やその支援に対してどのような思いを抱き、医療専門職に何を期待しているのかを明らかにすること、および回復期リハ病棟に勤務する専門職が、自身の業務の中でPWAの意思決定をどのように捉え、どのように実践し、どのように他職種と連携しているのか、その実態を明らかにすることの2点である。 今期は、国内外のPWAに対する意思決定支援に関する近年の動向を整理するために文献研究を行うとともに、他の障害や病期の意思決定支援に関する文献にも目を通し知見を得た。また、医療機関に所属する研究協力者との定例研究会をオンラインで4回開催し、本研究の目的・対象・方法・時期等を確認した。その中で、COVID-19の影響により研究協力機関でのデータ採取が当初の予定通り実施できないことが明らかとなったため、今期に実施可能な範囲での予備的調査を実施した。 まず、回復期リハ病棟退院後のPWAに対し、意思決定支援ツールであるTalkingMats日本語版(以下、TM)を用いた生活課題の焦点化を試み、その有用性を検討した。その結果、双方向性の効果的なコミュニケーションに基づき、PWA自身の見解がより反映されたケアプランの作成につながり、TMがPWAの自己決定権を保障するための有用なツールであることが明らかとなった。また、医療機関に所属する言語聴覚士を対象としたアンケート調査の結果から、PWAの意思決定に言語聴覚士が十分に関与できておらず、またPWA自身が自らの意思決定に関与する場面も限定的であることが明らかとなった。これらの成果は、関連学会で発表予定である。 次年度は、COVID-19の感染拡大状況や研究協力機関の医療スタッフの状況を考慮しながら、研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大の影響により、研究協力機関への立入が困難となったことや、本研究の対象者となるPWAには脳血管疾患を患われた高齢者が多く想定されていることにより、対象者との接触そのものが難しい状況となったことが要因である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究活動については、COVID-19の感染状況や社会情勢、研究協力機関の受入状況などを総合的に勘案し、研究計画の遂行が困難な状況が続くようであれば、研究対象者の条件や研究手法などについて再検討する予定である。 一方、今期に実施した予備調査の知見には、極めて有意義な内容があった。特に、PWAの意思や選好に基づく目標設定という観点から、TMを日常臨床に応用できる可能性が示唆されたことをふまえ、対象となる症例数を増やしたうえでPWAの意思決定支援における協力なツールとなりうるかについて検討していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期はCOVID-19の感染拡大のため、研究の情報収取のための交通費や宿泊費、研究協力者との打ち合わせを行う際の交通費など、研究を遂行するにあたって必要な国内旅費を使用する機会が皆無であった。また、研究そのものが実施可能な範囲での予備的調査に留まったことから、対象者への謝礼や研究データの文字起こしや入力のための人件費も当初の予定より大幅に少なくなった。 2021年度はCOVID-19の感染状況や社会情勢、研究協力機関の状況などを総合的に勘案したうえで研究を行い、研究成果の学会発表や論文投稿も予定しているため、そのための経費として使用していきたいと考えている。
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