研究課題/領域番号 |
20K23145
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大林 陽太 藤田医科大学, 医学部, 研究員 (00871120)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 表情 / 表情分析 / 感情 / 意識障害 / 最小意識状態 |
研究実績の概要 |
意識障害や言語障害を持つ患者は他者との意思疎通を図る上で困難を伴う。そういった患者に対しても医療者は可能な限り患者の意図・感情を汲み取り、尊重することが求められる。本研究では、意思疎通能力の低下した患者に対する感情の定量的評価手法の一つとして、表情変化から感情を推定する技術である表情分析の応用可能性を検討しその手法を提案することを目的とする。まず遷延性意識障害患者1名を対象に、感情誘発刺激(楽しいまたは中立の特性を持つ複数の音声刺激)を提示した際の表情から刺激特性に応じた表情反応を表情分析により検出可能かを検証した。検証の結果、表情分析は笑顔強度の評価において特に有用であり、意思疎通能力の低下した遷延性意識障害患者の表情反応の定量化に対する表情分析技術の応用可能性が示唆された。本結果を踏まえ、新規の遷延性意識障害患者1名を対象とし、リハビリテーション中や看護師による介入中の表情反応の定量化を試みた。結果として、介入中の特定の感情と対応した表情反応の強度と開眼率の指標が表情の主観的評価と同様の傾向を示した。本結果から統制された感情誘発刺激だけでなく、実際の介入中の表情反応に対しても表情分析技術は有用である可能性が示唆された。また開眼の有無や刺激特性に応じた表情反応は意識障害の重症度を反映する指標として考えられており、本研究により表情分析を用いて表情から意識障害の重症度を定量的に評価できる可能性が示唆された。また意識障害患者を対象とした研究と並行して、表情反応の基礎的知見を得るために、健常者を対象とした会話における笑顔反応特性の検討も行った。検討の結果、会話相手の笑顔量に応じて自己の笑顔量が変化すること、ただしその応答には性差があり、同性の相手に対してのみ生じることが示唆された。本研究から、意識障害患者など感情表現の乏しい患者の表情応答を検証する上で配慮すべき特性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
介入時の表情測定のための測定環境の準備と新規患者のリクルートに時間を要したため
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今後の研究の推進方策 |
介入(リハビリやケア)が患者にもたらす感情変化を明らかにすることを目的とした長時間(数十分)の連続した測定や、表情分析で得られる指標が治療の効果判定指標となり得るか検証するための長期間(数ヶ月)にわたる測定を予定している。測定対象者を随時増やしていく予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で研究活動が制限され、進捗に遅れが見られた。また学会等の参加に伴う移動が制限され、旅費を支出することが少なかったため、当該年度の支出額は想定よりも下回った。翌年度は研究の展開に伴い新規備品の購入の必要性があり、また論文執筆や学会参加に伴う雑費・旅費の 支出を予定しており、当初の予算相当額の使用を想定している。
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