本研究の目的は、産後女性の体力・身体機能、心理社会的側面の把握を行い、それに基づいた回復プログラムを開発することである。スポーツ庁による新体力テスト、日本整形外科学会によるロコモ度テストを用いて、体力・身体機能を測定し、質問紙調査によって心理社会的側面を把握する。心理社会的側面の指標としては「失体感尺度」を用いて、産後女性における身体感覚について調査を行い、体力・身体機能と合わせて検討している。現在、①体力測定+質問紙調査、②体力測定+質問紙調査+体組成測定、③体力測定+質問紙調査+心理学的視点に基づいた課題の3つの視点より多角的な検討を行っている。 本研究の一部は2019年度より開始し、一部修正を加えながら測定及び解析を継続した。複数箇所で研究協力を得ることができ、研究期間中に248名の測定・調査を実施した。その成果に関して国内学会5学会、国際学会1学会で報告を行った。国際学会では優秀演題候補に選出された。また現在論文を複数投稿中である。さらに、研究の傍らで地域で研究協力者と展開したオンライン講座等の活動が評価され、表彰を受けた。 これまでに得た知見は、産後女性の70%がロコモ度1以上に該当し、82%が産後の疼痛を経験していた。また産後のロコモティブシンドローム傾向には年齢、最終出産からの経過期間、産前の疼痛が関連することが明らかとなった。本研究の対象者はいずれも日常生活を自立して送っている産後女性である。産後女性が体力的に余裕がない状態で生活をしており、今後より精査が必要と考えている。体力回復プログラムとしては、リーフレットや講座を通して、健康状態の確認、すぐにできるセルフケアの啓発を行った。「ケアをする」行動を選択するには、その自覚と能動的な行動が必要であり、当事者の負担は少なくない。そのため、今後も社会での認知を高める必要がある。引き続き研究を進めていく。
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