研究実績の概要 |
痛風や高尿酸血症は特に日本人において遺伝的要因が強いとされる。また遺伝性疾患である腎性低尿酸血症(RHUC)は日本人で頻度が高い。 本研究では、世界的に研究が進んでいない(1)痛風症例の病型分類別のGWASと(2)アジア人における研究が少ない女性痛風症例、(3)RHUC症例の次世代シーケンサー(NGS)による解析という分子遺伝疫学解析を行った。 本研究全体の成果として、(1)痛風症例の病型分類別のGWAS(Nakayama, 2020)から新規遺伝子座を同定し、日本人が痛風の発症について遺伝的な影響を受けやすく適応進化してきたことを示した。また血清尿酸値の変動に関連する全X染色体関連解析(Nakatochi, 2021)や病型分類同士のGWAS(Toyoda, 2022)を行い新規遺伝子座を報告した。またGWASのメタ解析を国際共同研究(Chang, 2022)として報告したほか、痛風や尿酸、尿酸輸送体に関連する疾患の遺伝子変異を報告した(Kawaguchi, 2021; Toyoda, 2021; Ogura, 2021; Toyoda, 2022)。これらの成果は痛風・高尿酸血症の標的分子候補が見いだされ新規治療薬開発の資となるほか、「日本人に対するゲノム個別化医療としての新規治療法や予防法の開発」の可能性を示すものである。GWAS情報を基にしたメンデルランダム化解析では、コーヒーが因果関係を持って痛風のリスクを減少させることを証明した(Shirai, 2022)。また(2)女性痛風症例と(3)RHUC症例のNGSも実施し、現在解析中である。RHUCについては、診断指針の遺伝学的な妥当性と診断指針の一部修正も提唱した(Nakayama, 2022)ほか、臨床データから遺伝子変異を推測する方法を提唱し(Kawamura,2021)、現在のガイドラインに修正を迫る報告となった。
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