進行期下咽頭がんの標準治療は咽喉頭摘出術(Total Pharyngo-Laryngectomy:TPL)または化学放射線療法(Chemoradiotherapy:CRT)であるが、いずれにしても、発声・嚥下機能をはじめとして身体的・精神的に及ぼす影響は大きい。特にTPLはCRTと比較し根治性は高いが、喉頭を摘出し失声となるため、日常生活への影響が大きいとして、喉頭を残す臓器温存を目的にCRTが選択されることも少なくない。 愛知県がんセンターでステージⅢ/Ⅳの進行期下咽頭がんにおいてTPLを行った群とCRTを行った群でQuality of life(以下QOL)について比較するpilot studyを行った。TPLまたはCRTの治療後2年を経過した症例を対象にQOLについてアンケート調査を行った。尺度はEORTC QLQ-C30を使用し、Global health statusのスコアを比較した。症例はTPL群5例、CRT群5例であった。TPL群の平均53.3、CRT群の平均75、共通のSD28.0であり、ばらつきが大きかった。CRT群はTPL群よりスコアが高い傾向であったが、有意差は認めなかった。また、有意差は認めなかったが、TPL群はCRT群より役割的活動性、社会的活動性が低く、痛みが高い値となった。この研究で得られた平均点、SDを元にその後予定していた前向き試験に必要な症例数をTPL群75例、CRT群38例と算出した。 pilot studyの結果を元に、ステージⅢ/Ⅳの進行期下咽頭がんにおいて手術またはCRTを行う患者を対象として、2023年2月より前向き試験が現在進行中である。治療前、治療後半年、1年、2年とQOLと仕事復帰について4回のアンケート調査を行っている。
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