本研究の目的は、脳MRI画像の代表的な解析手法であるVoxel-based morphometry(VBM)を用いて、アルツハイマー型認知症(AD)と鑑別が難しいとされるレビー小体型認知症(DLB)や嗜銀顆粒性認知症(AGD)におけるBPSD発症のメカニズムの解明と効果的な予防・介入法を検討することである。 最終年度のR3年度は、対象者のデータベースを作成した。先行研究の限界や制限を改善するために、解析に用いるMRI画像の磁場強度を1.5テスラに統一し、研究協力者と画像のクオリティチェックを行い不鮮明な画像と欠損データがある患者を除外した。また、R2年度からNPIに加えて先行研究で使用されていなかったDementia Behavior Disturbance Scale(DBD)を新たに採用し認知症患者のBPSDを評価した。NPIとDBD両方の点数が取得できた75名の患者を対象とし解析した。対象者の臨床診断の内訳(数)は、AD(33)、軽度認知障害:MCI(31)、DLB(6)、認知機能障害なし(4)、前頭側頭型認知症(1)であった。次に、上記データを用いて75名を対象に統計解析ソフトSPM12を使用しVBMによる相関解析を行った。結果、NPI、DBDいずれとも相関する脳部位はなかった。また、AD、MCI、DLBそれぞれを対象に解析を行った結果、各疾患においてNPI、DBDいずれとも相関する脳部位はなかった。 NPIと異なる視点でBPSDを評価する尺度を用いて多角的に解析することで、BPSDの責任病巣が明らかになると思われたが、本研究では解明できなかった。この結果は、個人の元来の性格がBPSDに及ぼす影響などが原因と考える。今後は、病前性格を反映した解析を行っていくことが重要であることが示唆された。
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