研究課題
虐待による児童の年間死亡者数は、近年では年間約50件前後で推移している。一方で、死亡には至らないものの、後遺症が残る事例や、同一児童に対して継続的に繰り返されるといった危険度の高い身体的虐待事例の実態はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、平成24年度から27年度の我が国のレセプトデータを利用し、被虐待児症候群という傷病名を用いて、身体的虐待が疑われる外傷を伴う児童に関して調査した。調査の結果、脳機能障害のように後遺症が残る可能性が高い外傷を伴う事例も一定程度確認できた。今回使用したレセプトは1ヶ月診療分の1%~10%の範囲でサンプリングしたものであることに加えて、被虐待児症候群が付与されていない被虐待児童も存在することを考慮すると、危険度の高い虐待事例は相当数に上る可能性が高く、早急にこのような状況にある児童を発見し、保護するしくみを検討することの重要性を示唆できたと思われる。本研究では、危険度の高い重症事例ではほとんどが医療機関で治療を受けざるを得ないという状況に着目し、実診療を反映するレセプトデータを有効活用することができるのではないかと考えた。それでも、医療機関で治療を受けた事例の中で、被虐待児症候群という傷病名が付与されるのは一握りだと推測される。実際には、その一握りの潜在的な人数でさえ想定以上に多い結果であった。本研究で用いたレセプトデータという題材の側面から考察すると、限定された条件でしか活用できないと思われているためか児童虐待の研究分野ではあまり活用事例が見当たらない。本研究の成果として対外的に国内及び国際会議で発表することで、児童虐待分野においてもレセプトデータが有効活用できることを示せたのではないかと考えている。
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