昨年に引き続き、個人の効果と集団の効果を同時に考慮したThompsonサンプリングの手法を開発し実装した。オフラインデータに対して適用し、二重頑健法による治療効果の推定を行い、既存のランダム方策と比較して治療効果の向上を認めた。 本研究では、健康アプリの利用者に対して、多くの選択肢の中から効果の高いと考えられる選択肢を確率論的なアルゴリズムに従って選択するもので、本アルゴリズムが実装されれば、健康アプリの利用者に対して、健康状態の改善、生活習慣病の予防効果の向上が期待される。一方で、本研究は自治体と企業との共同研究であるため、倫理指針を遵守し、利益相反を適切に管理する必要がある。 自治体のデータ利用による実証研究に関しては、共同研究者である自治体職員が、共同研究先の企業に就職した後も、自治体の非常勤職員を兼務した状態で本研究に関与したため、倫理指針への違反の可能性があると判断し研究は中止とした。上記の理由による中止報告は大阪大学大学院医学系研究科にて承認された。 このような経緯を踏まえて、2021年度は共同研究機関の自治体と企業のデータは用いないこととし、本研究で開発した技術を、研究の趣旨である精密公衆衛生の実現を目指した基礎技術の開発と実証を見失うことなく、修正するために、申請者の所属する大阪大学医学部公衆衛生学教室の実施する地域コホート研究であるCirculatory Risk in Communities Study (CIRCS) へ適用するよう修正した。 今後申請者は、上記技術の研究開発の先進国である米国へ留学し、オープンデータあるいは米国や日本におけるデータに対して適用することで研究を継続し、論文報告する予定である。
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