研究課題/領域番号 |
20K23166
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
中村 晃久 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (00880072)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 救急電話相談 / 地域住民 / へき地 / ヘルスリテラシー |
研究実績の概要 |
申請者のこれまでの研究で、日本の救急電話相談は救急医療の需要が高い高齢者を中心に利用が少なく、地域住民によって十分に利用されていないという課題が明らかになった。本研究の学術的問いは、「効率的な地域医療を展開するために地域住民による救急電話相談の利用の向上のあり方はいかなるものか」である。地域住民による救急電話相談の利用を向上させるためには、地域住民による救急電話相談の利用ならびに認知の現状を的確に把握し、必要時に利用に結び付けていく必要がある。 そこで、本研究では、まず救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子を探索するために、埼玉県秩父市大滝に在住の20歳以上の地域住民(646人)を対象に救急電話相談の認知に関する質問紙調査を実施し、415人から回答を得た(回収率:64%)。救急電話相談を知っていた認知者には、認知のきっかけと利用経験を尋ねた。救急電話相談の認知群・非認知群の二群間で対象者の基本属性、同居者、かかりつけ医の有無などを比較した。本研究の結果は、論文作成の上、投稿中である。 次に、救急電話相談について広報する内容を検討する上で、地域住民に対してどのような症状の時に、特に救急電話相談の利用を促すべきかがを明らかにするため、救急電話相談によって救急要請を推奨される因子の探索研究を実施した。埼玉県保健医療部提供の救急電話相談記録(22,073件)より年齢・性別・居住地・電話者・相談理由となった症状や症状(以下、病症)・緊急度・相談時間を抽出した。利用者を、救急要請推奨群と非推奨群の2群に分類し、対象者の基本属性と病症を比較した。本研究の結果は、Asia Pacific region conference 2020(New Zealand)で発表予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受け参加を中止したため、発表の機会を逸したが、現在論文を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子を探索するための研究では、質問紙調査を終え、この調査から得た新たな知見を論文にまとめ投稿中である。救急電話相談によって救急要請を推奨される因子の探索研究においては、データの解析を終え、現在、論文を作成している。 今後、当初予定した、地理的な観点から救急電話相談の利用の実態を明らかにする研究に着手していく。また、地域住民を対象にした救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子の探索研究の結果を受け、医療従事者に対する救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子を探索する必要性が高まった。そのため、地域の医療従事者を対象にした救急電話相談の認知に関連する質問紙調査の実施を予定している。 当初参加を予定していた各種学会(国際学会:Asia Pacific region conference 2020(New Zealand)、第60回全国国保地域医療学会(北海道))には、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受け、残念ながら参加できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
地理的な要因が地域住民による救急電話相談の利用と関連がある場合、救急電話相談を重点的に拡宣する地域を特定できる。申請者が実施したパイロット研究では、地理的な要因が地域住民による救急電話相談の利用と関連があるという結果を得ている。そこで地域住民による救急電話相談の地理的な利用の差異を明らかにする研究を予定している。 また、地域住民を対象にした救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子の探索研究の結果を受け、救急電話相談の認知の割合を向上させるためには、医療従事者に対する救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子を探索する必要性が高まった。そのため、地域の医療従事者を対象にした救急電話相談の認知に関連する質問紙調査の実施を新たに予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、ビックデータを用いたPopulation based studyを実施するために、高性能のデスクトップパソコンが必要であり購入した。しかし、注文から納入までに約3か月を要し、年度をまたいだために、その経費は2021年度にて計上することなった。 国際学会:Asia Pacific region conference 2020(New Zealand)に演題を登録していたが、新型コロナウイルスのため残念ながら学会への参加を中止した。そのため、当初予定していた国際学会登録料ならびに海外旅費に係る経費が生じなかった。国内学会でも同様に、第60回全国国保地域医療学会(北海道)への参加を予定していたが、新型コロナウイルス影響を受け、学会が中止となり、学会参加費ならびに旅費に係る経費が生じなかった。 地域住民を対象にした救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子の探索研究の結果を受け、救急電話相談の認知の割合を向上させるためには、医療従事者に対する救急電話相談の認知の割合ならびに認知に関連する因子を探索する必要が高まった。そのため、新たに、地域の医療従事者を対象にした救急電話相談の認知に関連する質問紙調査の実施を予定しており、2020年度より繰り越した研究費の一部を質問紙調査の協力者に対する謝金ならびにアルバイト謝金(質問紙配布・収集・データインプット等)にあてる予定である。
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