研究課題/領域番号 |
20K23170
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
松本 紗里 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20754881)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | アクロレイン / 浴槽内死亡例 / 死後検体 / 脳虚血 / 脳梗塞 / 生化学マーカー |
研究実績の概要 |
2012年4月1日~2019年11月30日までに東京慈恵会医科大学法医学講座にて行われた法医解剖例のうち、解剖時に診断目的で血清と尿が採取され、-20℃で保管されていた症例を対象とした。血清中、尿中のアクロレイン濃度は、Acrolein-Lysine Adduct Competitive EIA Kit(TAKARA, Japan)を使用し、Enzyme-linked Immunosorbent Assay (ELISA)にて測定を行った。尿については、ELISA施行前に3000rpmで10分間遠心分離を行い、上清を測定した。測定されたアクロレイン濃度と、年齢・性別・死後経過時間(postmortem time: PMT) ・死因において、統計学的検討を行った。 血清中・尿中アクロレイン濃度は、年齢やPMTと相関性はなく、性別において有意差を認めなかった。また、全症例に対し、血清アクロレイン濃度は脳梗塞症例では有意に高値を示し、尿中アクロレイン濃度は脳梗塞症例では有意差を認めなかったが、クモ膜下出血と脳出血において有意に低値を示した。血清中アクロレイン濃度について、脳梗塞症例でROC曲線を作成しカットオフ値を算出すると、脳梗塞症例の血清アクロレイン濃度カットオフ値は129.7nmol/mlであった。血清中アクロレインと尿中アクロレイン濃度の間には、相関はみられなかった。 血清、尿ともに、死後でも安定して測定できることが示された。血清アクロレイン濃度は有意に脳梗塞症例で高値となり、臨床同様に、死後検体を用いた脳梗塞診断におけるバイオマーカーとなることが示された。尿中アクロレイン濃度は脳梗塞症例で有意差はなく、クモ膜下出血症例や脳出血症例で低値となった。今後、尿量と尿中アクロレイン濃度の関係について検討し、尿量に影響を受けない尿中アクロレイン値の評価方法を確立する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行により、大学の方針として不要不急の研究を一時中断するよう推奨があったこと、自宅勤務を推奨された期間があったことから、研究の進行度は当初の計画よりやや遅れています。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ予定数の測定を完了しており、詳細な統計学的検討の後、論文制作を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、測定の進行が遅れたため、購入予定であった消耗品を今年度は消費しなかった。また、測定完了が遅れたため、統計分析や論文投稿も遅れてしまった。予定数の検体はほぼ測定終了しており、今後統計や論文作成・投稿を中心に書籍や英文校正費、投稿費を中心に使用予定である。
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