研究課題/領域番号 |
20K23171
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
原田 有理子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (60878263)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 口腔保健 / 糖尿病 / ネパール / 新型コロナウイルス感染症 / ヘルスプロモーション / フィールド研究 |
研究実績の概要 |
本研究はネパールにおけるⅡ型糖尿病患者に対する口腔保健推進を実施し、その効果を検証するものである。これはフィールド研究であるため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を多く受けた。研究者本人のネパールへの渡航ができなくなったことに加え、本研究の共同研究者(カトマンズ大学デュリケル病院所属)のフィールド調査も、政府指針より不可能になった。このような背景から、COVID-19禍だからこそ可能な2つの研究を実施した。 1) CHWが実施可能な口腔保健推進モデル構築のための体系的文献レビュー 歯科の専門的知識を持たないCHWに対して、糖尿病と口腔保健の関連性を含めた基本的な口腔保健に関する教育モデルを作成する。科学的根拠に基づくモデルを構築するために、これまでに行われた研究成果をレビューする必要がある。具体的には、歯科医師以外の人材が主導する糖尿病患者に対する口腔保健推進介入研究で、どのような介入が効果的と報告されているのかを収集することを目的とした。 2) オンライン質問調査によるCOVID-19がネパール歯科医師に与えた影響の分析 ロックダウンを実施したアメリカやイギリスは、ロックダウン中の通常の歯科診療の中止を勧告した。一方、ネパールは、ロックダウン措置中に歯科診療を継続するかの判断は歯科医師自身に委ねられた。世界保健機関(WHO)が報告したとおり、歯科診療は感染症への交差感染リスクが高いとされている。ネパール人歯科医師がロックダウン禍にて受けた影響、どのようなサポートを必要としているかを明らかにすることが喫緊の課題となっていた。過去に行われた研究より、大学や政府管轄の病院に勤務している歯科医師と、開業歯科医師では必要としているサポートが異なることが推測されており、本研究では勤務形態にて必要としているニーズがどのように異なるのかを分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り、本研究はCOVID-19の影響を多く受けた。特に、ネパールの初期対応は迅速で、累計感染者がわずか2名であった2020年3月24日からロックダウンを開始した。 本来であれば、介入活動実施前の口腔診査ベースライン調査やCHWへの教育活動を予定していたが、全て中止となった。特に、口腔診査はその特性より感染予防対策(マスク、グローブ、ディスポーザブルミラーの使用)などを十分に行い実施することも検討したが、共同研究者と議論を重ね、村民はもちろん研究者も安心して活動が行える状況になるまでは延期することとなった。このような中でも、上述した通り文献レビューやCOVID-19禍だからこそ可能な研究から積極的に実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度実施したCHWが実施可能な口腔保健推進モデル構築のための体系的文献レビューは、現在文献の収集、スクリーニング終了し、分析を行っている最中である。論文の形にして国際誌に結果を投稿する予定である。一方で、オンライン質問調査によるCOVID-19がネパール歯科医師に与えた影響の分析は既に分析を終え、国際誌に結果を投稿した。これらと並行して、現在はCHWへの糖尿病と口腔保健の関連性に関する教育マニュアルをネパール人歯科医師と共に開発している。現地歯科医師や、糖尿病専門医、保健省担当官にもアドバイスを仰ぎながら、将来的には政策に反映することができる教育マニュアルを作成することを目指している。今後、COVID-19の状況が改善すれば、計画通りの介入活動を実施するための準備も並行して行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により、研究代表者のネパールへの渡航が不可能になったこと、およびネパール政府の指針により共同研究者がフィールドを訪問し研究対象者である村民の口腔診査や教育活動が不可能になったことにより、使用額に差が生じた。次年度にCOVID-19の拡大が抑止され、予定通りの研究活動が可能になれば、介入活動を実施する。一方で、状況に改善が認められない場合は、研究内容を柔軟に改変し、遠隔から実施可能なものに改良する必要性も検討している。
|