研究課題/領域番号 |
20K23172
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
河田 照絵 日本赤十字看護大学, 看護学部, 准教授 (40438263)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ACP / 慢性呼吸器疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、慢性呼吸器疾患患者の病期移行に伴うACPを支える意思決定モデルの開発を行うことを目的とし、本年度は、慢性呼吸器疾患患者に対するACP、意思決定、介入の時期についての文献検討から慢性呼吸器疾患患者に対するACPの実践の現状と課題と移行期の定義を検討するために国内外の文献検討を実施した。 結果、慢性呼吸器疾患患者のACPの捉え方について、最終末期の意思決定としての人工呼吸器の装着の選択や心肺蘇生の実施などの事前指示や代理意思決定をACPとする文献が散見される一方で、発症早期から緩和ケアを導入するための介入研究などの報告もみられ、ACPとして検討される内容に違いがあることが明らかになった。慢性呼吸器疾患患者に対するACPについて、ACPを促進することの困難さとして『慢性呼吸器疾患の予後の不確かさ』、『医療者のスキル』、『コミュニケーションの課題』、『ACPや緩和ケアに対する理解の不足』、『意思決定支援のセンス』などの課題が挙げられた。一方で患者側の課題として『疾患に対する理解の不足』『ACPに対する理解の不足』『恐れや否定からACPについての議論の回避』『抑うつや不安の助長』などが挙げられた。また、医療者と患者の『コミュニケーションギャップ』があることも明らかになった。また、慢性呼吸器疾患患者のACPについて看護師が介入する効果として、患者が医師とのコミュニケーションが促進されること、抑うつや不安の減少、意思決定が促進されるなどが明らかになり、介入のタイミングは、急性増悪に伴う入院時ではなく、在宅酸素療法の導入時や退院後の外来などの変化がある、もしくは変化があった時期が効果的であったと報告されている。 しかし、早期からのACPの話合いのプロセスにおける意思決定支援に向けたケアの具体的なケアの方法は明らかになっておらず、支援の必要性の言及にとどまっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初に想定していた慢性呼吸器疾患患者の相談活動や意思決定支援場面の参加観察について、COVID-19感染の拡大に伴う医療施設の状況に合わせて、研究計画の修正を検討する必要が生じた。今後、文献検討から得られた示唆をもとに、熟練看護師へのインタビュー調査の実施へと研究計画を修正していく。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、文献検討から看護師による介入が、慢性呼吸器疾患患者のACPの話し合いを行うことに役立つことが示唆されていることから、呼吸器疾患看護認定看護師や慢性疾患看護専門看護師が現状で行っている意思決定支援についてインタビュー調査を実施する。 特に、先行研究では、継続的な療養支援や急性増悪後の外来における話し合いが、ACPの話し合いを始めるタイミングとして示唆されていた。そのため、病期の移行を捉えるタイミングや病みの軌跡が推移するタイミングでどのような意思決定を支援しているのか、患者や家族のニーズとして看護師はどのようなことを捉え、どのような支援を行っているのかなどについてインタビュー調査を行い、慢性呼吸器疾患患者の病期移行に伴うACPの意思決定を支援するための看護モデルについての枠組みを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画として参加観察を予定していたが、COVID-19の感染拡大に伴い研究計画に遅れが生じたため、研究費に次年度使用額が発生した。本年度、研究計画を修正し、インタビュー調査の実施を行い、研究費の執行する予定である。
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