研究課題/領域番号 |
20K23179
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
朴 将源 関西医科大学, 医学部, 助教 (30755616)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | アスピリン / PIK3CA / 大腸癌 / グルタミン代謝 |
研究実績の概要 |
PIK3CA変異ならびに野生型大腸癌細胞株を用いて、アスピリン処理およびグルタミン枯渇による細胞周期への影響を、フローサイトメトリーを用いて解析を行った。PIK3CA変異株であるHCT-15およびHCT116細胞においてはアスピリン処理ならびグルタミン枯渇によりG1期停止を認めた一方で、PIK3CA野生型であるSW480細胞においては明らかな細胞周期への影響を認めなかった。 続いて、HCT-15細胞に対しアスピリン処理を行った上で網羅的解析を網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)を実施したところ、アミノ酸トランスポーターに関連する遺伝子群がエンリッチされた。さらに、ウエスタンブロッティングによりタンパク発現を確認したところ、グルタミナーゼなどのグルタミン代謝関連酵素がアスピリン処理により誘導されることを確認した。 また、アスピリン処理により誘導されたグルタミン代謝関連遺伝子群に対しプロモーター解析を行ったところ、アスピリン処理ならびにグルタミン枯渇により、mRNAレベルならびにタンパクレベルにおいて、Activating Transcription Factor 4 (ATF4)が誘導されることを確認した。 本結果をもとに、グルタミナーゼ阻害剤(CB-839)、アミノ基転移酵素阻害剤(aminooxyacetate)、アミノ酸トランスポーター阻害剤(サラゾスルファピリジン)などを用いて培養癌細胞のグルタミン代謝を修飾し、アスピリンの細胞増殖抑制効果に及ぼす影響をCell Counting Kit-8 およびコロニー形成能試験により確認したところ、アスピリンとの併用により増殖抑制効果が増進されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的マネジメントが容易であるHCT-15細胞、HCT116細胞、SW480細胞を用いて、PIK3CA変異癌細胞におけるグルタミン代謝への依存性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
PIK3CA isogenic cell line であるSW48細胞(PIK3CA H1047R/wt)を用いて、上記の現象がPIK3CA変異特異的であるかを検証していく予定である。既に、PIK3CA変異細胞のRNA-seq解析は終了しており、令和3年度においてPIK3CA野生型細胞の解析を追加し比較する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率よく試薬購入を実施するために、端数分の繰り越しが妥当であると判断した。PI3K阻害剤であるCopanlisib (BAY 80-6946) 10mg 63400円の購入に充てる。
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