低栄養の概念や診断基準については明確な定義がなされてこなかったが、近年、世界各国の臨床栄養関連学会が共同参画することで初めての世界規模での低栄養診断基準であるGLIM基準が発表された。しかしながら、この基準の臨床的有用性の検証はまだ不十分であり、とりわけ高齢者の生活の質や生命予後に大きな影響力を持つサルコペニアを含む骨格筋機能特性との関係性を認識するためのエビデンスの創出は喫緊の課題と考えられた。そこで、本研究は「次世代の低栄養評価法であるGLIM基準は地域在住高齢者の骨格筋機能特性と関連性があるのか」を学術的な問いとして設定し、これを明らかにすることを目的として開始した。 近年、加齢に伴う骨格筋の変化として筋量や筋力の他に筋質の変化を評価することの重要性が認識されてきている。骨格筋の質的な変化は、骨格筋内もしくは筋間脂肪の増加や筋線維サイズ減少、筋の線維化などによって引き起こされると考えられており、能力障害や転倒、死亡などのアウトカムに筋量や筋力とは独立した影響力を有することが知られている。我々は、地域在住高齢者を対象に大腿前面筋の超音波画像より骨格筋の質を評価し、GLIM基準との関係性を検証した。結果、GLIM基準により定義される低栄養者のみではなく非低栄養者においても一定の割合で筋質の低下している者が存在することが示された。今後は、筋質が各種のアウトカムに対してGLIM基準と独立した影響力を有するかどうかについてのさらなる検討が必要であると考えられた。
|