点眼は局所的に高濃度で投薬ができる眼科領域の主要な治療法である。眼科疾患は加齢性疾患が多くを占めており、高齢患者は自立して的確に点眼手技を習得する必要があるが、高齢患者の中には点眼薬が眼内に確実に滴下されない、点眼容器先端が結膜や睫毛に接触しているなど誤った点眼手技によって治療効果が期待できない人がいると推察できる。 そこで本研究では、点眼姿勢、点眼動作、点眼法の視点から点眼の成否要因を明らかにし、点眼薬を高齢者自身で投薬するための評価視点への示唆を得ることを目的とした。本研究においては、高齢者と看護師の主観的・客観的な情報から多角的な視点での検証を行うため、段階的に研究を行った。 [第1研究]点眼指導を行う際の患者の姿勢や点眼法、評価視点について調査する目的で眼科看護に携わっている看護師を対象に質問紙調査票による調査を実施した。対象施設および看護師は全国の特定機能病院、全国自治体協議会に加入している病院で、かつ眼科病棟を有している病院の看護師経験年数3年以上、眼科看護経験年数3年以上の看護師を対象とした。438施設に調査票を郵送し159名の看護師から回答が得られた。 [第2研究]研究参加に同意が得られた日常生活動作が自立している70歳代の健康な高齢女性9名を対象に、椅子の背もたれの有無の違いでの点眼姿勢や点眼動作、および手指の動作、把持力の調査を行った。点眼動作に関しては、ビデオカメラを用いて撮影を行いデータ収集を行い、分析中である。点眼時の手指動作や圧力に関しては、今後、専用の工学デバイスを用いて再度実験予定で現在計画中である。
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