研究課題/領域番号 |
20K23220
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
峰広 香織 金沢大学, 附属病院, 診療放射線技師 (80884593)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2025-03-31
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キーワード | ガドリニウムオキシ化合物 / 脊椎側弯症 / シンチレータ / 全脊椎X線撮影 / 小児被ばく低減 / SDNR / DQE / ヨウ化セシウム |
研究実績の概要 |
脊柱側弯症は、脊椎が10度以上の回旋を伴い側方に3次元的に変形する疾患であり、小児の2-3%に発生する。また、成長に伴い進行する病気であり、年に数回の全脊椎X線撮影は必須である。一方で側弯症患者において幼少期と思春期の複数回の画像診断による放射線被ばくが、乳癌や甲状腺癌を増加させたという報告がある。申請者は2018年発生器側に金属フィルタを負荷することにより、被ばく線量を大幅に低減できることを発表した。そこで本研究ではX線受像機側の感度を上昇させることにより、より低線量での最適線量を検討する。 本研究では受像機側の感度を上昇させるために、既存のComputed Radiography (CR)ではなく放射線を光に変換せずにそのままデジタル値に変換するシンチレータ装置Degital Radiography (DR)を使用し、装置の感度の指標である量子検出効率(DQE)を計測した。DRには2種類のガドリニウムオキシ硫化物(GOS)とヨウ化セシウム(CsI)シンチレータを使用した。また、既存の装置との画像を比較するためにそれぞれの検出器においてsignal-difference-to-noise ratio(SDNR)を測定した。 DQE測定の結果から、CRと比較しGOSでは50%、CsIでは73%の線量を低減できる可能性が算出された。しかし、実際の画像を使用したSDNR測定において線量低減率は、GOSにおいて12%、CsIでは78%とDQEの結果と比較しGOSでは大きな解離が見られた。結果が解離した原因として散乱線を除去するグリッドの配置の問題や、測定するX線量が少なすぎることが考えられたため追加実験を行い、途中経過を2021年度の学会にて発表した。 現段階では受像機にCsIシンチレータを使用することにより、大幅な線量低減が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的パンデミックのため延長申請を行い、当初の予定としては1年遅れの2022年終了予定であった。しかし、申請者が2022年妊娠し2023年に出産育休中のため、さらに延長申請を行ったため2024年復帰後に再開予定である。
また半導体などの部品の納入も遅れており実験自体はレンタル品や代替品で行っているがやや遅れている。2024年度前半には追加実験を終了し、結果をまとめ次第、可能であれば国際学会で発表したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は2020年度にガドリニウムオキシ硫化物(GOS)と、CsIの2種類のシンチレータを使用し様々な管電圧領域で感度を計測し、シンチレータの違いによる検出器の物理評価を行った。しかし、COVID-19が世界的に流行中であり物品不足に陥ったため若干の遅れを伴った。その後、部品機器メーカ側と交渉を行い、レンタル品と代替品を使用し2021年度に予定していたSDNR測定は無事に終了した。 育休復帰後は2022年度に予定していた「DR装置を用いた小児全脊椎X線撮影の最適線量の検討」に取り掛かる予定である。感度測定の結果をもとに、それぞれのシンチレータに対する付加フィルタ厚、管電圧、管電流を検討し、小児の全脊椎X線撮影に最適な条件を決定する。次にそれぞれの検出器の感度ごとに補正された撮影条件で取得した画像が、感度測定の結果と一致するか視覚評価を行う。 申請者の研究環境が変わり実験がやや遅れているため、復帰後すぐの開始が危ぶまれるが、可能であればその結果をもとに臨床実験を行い、画質を損なうことなく放射線被ばくを低減する新しい撮影プロトコルについて評価を行う予定である。 これにより世界に先駆けて、より低線量での最適線量を提示することにより、小児がんの減少に繋がることを期待したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的拡大により国際学会、国内学会ともに参加が見送られたため、旅費に計上した金額に差が生じた。また納品予定であった半導体も入荷未定のため物品費にも差額が生じた。 育休復帰後は国内外の学会に参加するための経費として使用予定である。
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