世界的な難民危機に対して,尊厳が脅かされている難民への看護ケアの提供は重要な課題である。しかし,日本では難民への看護サービス自体が整っていないのが現状である。そのため,在日難民の複雑な背景や難民自身の声をまずは把握したうえで,日本式の看護ケアモデルを構築することが必要である。 本研究では,看護ケアモデルの構築に必要な難民自身が希望する生活,すなわち「その人らしく生きる」ことに必要な要素の抽出を目的として実施した。在日インドシナ難民を対象にエスノグラフィーを用いた。2021年9月~2023年1月において、発展的研究過程を参考にインドシナ難民コミュニティにおける参与観察や,在日難民14名を対象にオンライン及び感染対策を十分に行い対面でのインタビューを実施した。 分析の結果、在日難民のその人らしく生きることの要素として、「その人らしく看取られること」「信念の場所があること」「自分の文化を安心して守ることが出来る」「周囲の人や日本社会から認められること」といった要素が抽出された。在日難民にとって、自分たちの文化様式で葬儀ができること、日本社会で自分たちの文化が理解され安心して過ごせること、信仰の場として心安らぐ場所があることなどが重要であった。在日難民の高齢化に伴い、看取りという要素が抽出された。難民を対象とした文化的に妥当な看護ケアモデルの構築に向けて、文化固有の病の意味付けや看護ケア方法の探索、看護職者と難民との相互理解の必要性が示唆された。 本研究結果の一部を学会発表し、英文国際雑誌への投稿準備中である。
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