重症呼吸不全は呼吸機能が大幅に障害され、酸素供給と換気が不十分な状態を指す。重症呼吸不全患者は人工呼吸器による治療が必須であり、その治療期間が適切でなければ合併症のリスクが増大する。しかし、人工呼吸器の使用を離脱(ウイニング)する時期を正確に予測する指標はまだ確立されていない。その中で注目されているのが、100ミリ秒の気道閉塞圧(P0.1)である。P0.1は人工呼吸器治療中に簡単に測定でき、ウイニングの予測指標となり得るかが議論されている。しかし、先行研究によるP0.1の閾値は研究ごとに異なり、統一的な評価指標が未だに確立されていない。よって、明確な判断基準を設け、臨床現場での活用に繋げるには、最適な閾値を求め、その診断能力を評価する必要がある。
我々は、ウイニングに対するP0.1の有効性について検討した先行文献の抽出を行い、異質性の評価を行い、診断メタアナリシスを実施した。検査の診断パワーを表現する指標として陽性尤度比と陰性尤度比との比で定義できる診断オッズ比を算出した。P0.1はウイニングの可否について有意に診断能力がある、という結果が得られたため、学術専門誌に研究論文として投稿した。ウイニングの可否の判別におけるP0.1の有効性は人工呼吸器の治療成績の向上に寄与するエビデンスの一つになると期待される。
また、この研究を軸に、集中治療領域に関するメタアナリシスの研究を複数実施した。これらの研究成果により集中治療領域の臨床実践や未来の研究にも貢献すると期待されている。
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