研究課題
社会の高齢化に伴う心房細動(AF)患者の増加は、我が国の医療経済に深刻な影響を与えている。近年のAF治療は急速に発展しており、カテーテルアブレーションや新規抗凝固薬、左心耳閉鎖デバイスなど、治療の選択肢は大幅に広がった。しかしながら、各治療の成績にはばらつきがあり、全てのAF患者に有効な治療法は未だに確立されていない。また、新規治療は従来のものと比較して総じて高額であるが、その費用に応じた治療効果が得られているのかは十分に検証されていない。そこで本研究の目的は、本邦で実施可能なAF治療の費用対効果を評価し、さまざまな状況下における最も費用対効果の高い治療戦略を確立することである。本年度は、AFと睡眠時無呼吸症候群の関連性をテーマに研究を行った。カテーテルアブレーションは効果的なAF治療として十分に確立しているが、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を合併した患者には有効性が低い。一方で、OSAを合併していたとしても、適切なOSA管理を行えばアブレーション成績が改善することが明らかになっている。そこで、心房細動アブレーション予定の患者に対し、事前のOSAスクリーニングおよび治療介入を行うことが、費用対効果の面で優れているかどうかを、シミュレーションモデルを構築し費用対効果分析を行った。その結果、AFアブレーション前にOSAスクリーニングおよび治療介入を行った方が、アブレーション治療のみ行う方針に比べて費用対効果に優ることが明らかになった。また、OSAのスクリーニング方法に関しては、外来で施行可能な簡易モニターを用いたスクリーニング検査でも有用であることが示唆された。研究結果をまとめ、学術誌「Circulation Reports」に論文として発表した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、心房細動(AF)と睡眠時無呼吸症候群の関連をテーマに研究を進めた。費用対効果分析の結果、AFアブレーション予定の患者には事前に睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査および治療介入を行う方が費用対効果に優れていることを明らかにした。その結果は学術誌に論文として報告することができた。その他にもAF治療における複数の仮説を検証中であり、進捗状況は順調であると考える。
引き続き本邦における心房細動(AF)治療の最新データの収集および結果の統合を行う。そのデータを基に、本邦における実施可能なAF治療の費用対効果を評価し、さまざまな状況下における最も費用対効果の高い治療戦略を模索していく。
2020年度は世界的なCOVID19感染拡大に伴い、国内外の多くの学会が中止もしくはWeb開催となった。そのため当初予想されていた学会参加に伴う旅費等の費用が不要であった。2021年度も各学会の開催状況は不透明であるが、一部の学会は現地参加を再開しており、今年度の学会参加費等に使用予定である。また、今年度交付いただく予算と同様、研究に必要な物品や解析ソフトなどに使用予定である。
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Circulation Reports
巻: 2 ページ: 507~516
10.1253/circrep.CR-20-0074