研究課題/領域番号 |
20K23227
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 緑 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40883989)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 発症前診断 / 遺伝カウンセリング / 心理社会的支援 / 遺伝性神経筋疾患 |
研究実績の概要 |
発症前診断とは、ある遺伝性疾患と診断された発端者の遺伝情報をもとに、その時点では当該遺伝性疾患の症状がない同一家系内の者に対して、発端者と同じ遺伝子病的変化の有無を解析することによって、自身が将来同一疾患を発症する可能性を調べる検査である。遺伝性神経筋疾患の多くは、根本的治療法や予防法が確立されておらず、発症前診断を受けることによる医学的メリットはほとんどなく、本人や家族に大きな精神的負担が生じるとされる。遺伝子解析技術や疾患の原因遺伝子の解明等が進み、発症前診断は徐々に臨床遺伝に浸透しつつあるが、多くの倫理的・法的・社会的課題(Ethical Legal and Social Issues, ELSI)を孕んでいる。ELSIに対応するためにも、発症前診断の実施に際しては遺伝カウンセリングの実施が必須であり、このことは日本医学会による「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」にも記載されている。しかし、発症前診断の検査前後の被検者やその家族を対象とした心理的支援に関する研究はほとんどされていない。また、検査前後の遺伝カウンセリングや遺伝医療の提供体制についても施設ごとに異なっている。 本研究の目的は、全国の遺伝診療部門における遺伝性神経筋疾患の発症前診断の現状および課題を調査するとともに、実際に発症前診断を受けた経験のある当事者あるいは経験のない当事者の意見および経験を調査することによって、遺伝性神経筋疾患の発症前診断に関するよりよい支援体制を示すことである。 2020年度は、データベースを用いた文献調査を進めるとともに、全国の遺伝診療部門および当事者へのアンケートを作成し、倫理委員会での承認を得た。また、遺伝性神経筋疾患と診断された発端者が家族に「遺伝性」ということを伝えることについての考察として学術集会での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、遺伝性疾患の発症前診断に関してデータベースを用いた文献調査を進めるとともに、本研究で使用するアンケート用紙等を作成し、倫理委員会での承認を得た。また、遺伝性神経筋疾患と診断された発端者が家族に対して「遺伝性」を伝えることについて考察し、学術集会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、進行中の文献調査を進めるとともに、アンケート調査を開始する。それらの結果を以って、遺伝性神経筋疾患の発症前診断におけるよりよい支援体制を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究におけるアンケート調査においては遺伝性神経筋疾患と診断された発端者の血縁者を対象としているが、回答人数の予想が困難であり、十分な回答数が得られなかった場合にはインタビュー調査を追加することも検討している。インタビュー調査を実施することになった場合には、実施に必要なシステムおよび機器、音声記録・管理媒体への費用に充填したいと考えている。
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