研究課題/領域番号 |
20K23227
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 緑 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (40883989)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 発症前診断 / 遺伝カウンセリング / 心理社会的支援 / 遺伝性神経筋疾患 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、現時点では治療法・予防法の確立されていない遺伝性神経筋疾患における発症前診断に関する文献調査および海外における学術集会での情報収集を進めた。その結果、当事者の発症前診断に対する心理社会的側面には、遺伝カウンセリング受診前(発症前診断を受けるまでの過程)、受検の動機、受検に対して消極的になる要因、発症前診断のプロトコールやプロセスへの意見、結果説明後の影響に関して、結果の共有に関して、着床前診断・出生前診断の実施についてなど、海外では発症前診断におけるあらゆる段階での報告がなされており、心理社会的支援の重要性に関する知見が得られた。 また、2021年度は遺伝性神経筋疾患の当事者および国内遺伝子診療部門に対する発症前診断と心理社会的側面に関するアンケート調査を実施した。国内の二つの患者会(DM-familyおよび全国SCD・MSA友の会)および全国遺伝子医療部門連絡会議会員施設にご協力いただいた。その結果、遺伝子診療部門では、治療法・予防法のない遺伝性疾患の発症前診断を実施している施設の割合は約55%(37施設)であり、さらに手順書を設けている施設は約27%(18施設)であった。患者会では、発症前診断の受検経験がある者が約16%(10名)いたが、残りの約84%(53名)は経験がなかった。発症前診断の受検経験がある10名の中には、遺伝子医療部門ではない一般診療科で受検した者も4名おり、Anticipatory guidanceはなされておらず、結果陽性であってもフォローアップがなされていない者もいた。また、発症前診断に対する意見には、受検してよかったという意見の他、情報が欲しい、アクセスし易くして欲しい、着床前診断のために受検した等があった。 治療法・予防法の確立されていない遺伝性疾患における発症前診断の現状に即した更なる体制整備の必要性が見込まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査を引き続き進めたとともに、患者会および全国遺伝子診療部門に対するアンケート調査を実施した。アンケート調査により、国内における治療法・予防法の確立されていない遺伝性疾患の発症前診断に関する心理社会的側面や現状を把握することにつながった。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート調査で得られた結果は、2022年度の国内学会で発表予定である。また、論文を投稿することによって、治療法・予防法の確立されていない遺伝性疾患の特に心理社会的支援に貢献したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査により得られた結果に関して論文投稿予定であるため、主に論文投稿に係る経費に使用したい。
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