研究実績の概要 |
2021年度に実施した、遺伝性神経筋疾患の当事者および国内遺伝子診療部門に対する発症前診断と心理社会的側面に関するアンケート調査について、国内遺伝関連学会(第46回日本遺伝カウンセリング学会学術集会)にて発表し、国際学術雑誌(European Journal of Medical Genetics)にて報告した。 国内遺伝関連学会では、「治療法のない遺伝性神経筋疾患の発症前診断における当事者の経験と課題」と題して、アンケート調査結果から得られた当事者の意見や経験に重点を置いて主に次の内容を報告した。アンケート調査では、63名の当事者から回答が得られたが、発症前診断を受けた経験がある者はそのうち10名であり、そのうち6名が遺伝診療部門にて発症前診断を受検しており、予備的ガイダンス(Anticipatory guidance, AG)のプロセスを経験していたが、残り4名は一般診療科で受検しておりAGは経験していなかった。また、発症前診断を受けた経験のない当事者36名から自由記述による回答が得られ、8名は「発症前診断」を知らず、6名は発端者(血縁者)の疾患が「遺伝性」であることを知らなかったと回答した。 国際学術雑誌では、当事者のみならず国内遺伝子診療部門から得られた回答を含め、総合的に報告した。結果から考えられる考察として、日本における治療法のない遺伝性疾患における発症前診断のガイドラインの必要性、当事者への「発症前診断」の周知(「発症前診断」の存在を知り、提供可能な医療機関・遺伝診療部門を知ること)の重要性、当事者や発端者が血縁者に「遺伝性」という情報を共有することの重要性と課題について述べた。
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