ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)は、人々が経済的困難を伴わずに医療サービスを利用できる状態を示す。UHC指標として医療費自己負担分(OOP:Out-ofpocket)支出が世帯総支出の25%を超える破滅的医療支出に陥る世帯の比率がある。ベトナムでは入院患者の食事・介助等が家族の責務であるためこれらの『隠れたOOP支出』を『国際定義に基づくOOP支出』に加えた『実質OOP支出』に基づく破滅的医療支出世帯の比率は、従来の値より高いと予想される。本研究では、『隠れたOOP支出』を含む『実質OOP支出』を算出し、破滅的医療支出世帯の過小評価を明らかにし、OOP支出の国際定義に課題提起を試みた。具体的な年度毎の活動内容は以下の通り。 2020年度は、新型コロナウィルスのパンデミックにより計画していたほぼ全ての活動が実施されなかった。研究デザインの再考や倫理審査に必要な書類の作成を行った。 2021年度も引き続き新型コロナウィルスのパンデミック下となったが、研究デザインを確定し研究対象をベトナム国フートー省病院の患者とすることに決定した。これらの研究計画をもとに、日本ならびにベトナムでの研究倫理審査を申請し、承認を得た。 2022年度は、ベトナム国フートー省病院の患者データベースから無作為に入院・外来患者を219人抽出し、彼らが所属する219世帯を対象に、過去12か月分の医療費自己負担分OOPデータを入院患者の家族との構造化インタビューならびに同病院の会計データベースにより収集した。その後、丁寧にデータクリーニングを行い、基本的な記述分析が完了した。
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