研究課題/領域番号 |
20K23231
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
鈴木 由依子 公立小松大学, 保健医療学部, 助教 (40881983)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / リンパ経路 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
2020年度は、研究の第1段階として、正常ラットの下肢リンパ系の解明・ラットの下肢リンパ系を明らかにした。 インドシアニングリーン(ICG)とエバンスブルー(EB)混合液をラット下肢の各箇所に注射し、赤外線カメラにおけるICGの蛍光と、染色されたリンパ管の肉眼的な観察によってラットの下肢リンパ系を同定した。これまでにマウスで明らかになっている浅在リンパ管と深部リンパ管のつながりについても同様に観察を行った。また、免疫組織染色を行い、組織学的にリンパ管を観察した。 ラット下肢のリンパ管の走行を観察し、4つのリンパ排液経路を同定した。これらは、以前の研究で明らかになっていた経路だった。これまでにマウスで明らかになっていた浅部リンパ系と深部リンパ系を接続するリンパ経路は、ラットにおいても観察された。解剖の結果を踏まえ、今後リンパ浮腫作成を行うために、下肢リンパ節郭清に必要なリンパ節を決定した(腸骨リンパ節、鼠経リンパ節、膝下リンパ節)。皮内注射によって下肢に網目状に観察される前集合リンパ管については、その特徴を捉えるために、上記方法による観察を継続している。引き続き下肢リンパ系の全体的な構造をとらえて、リンパ浮腫作成を行うための準備を行う。 今回明らかになった結果は、PLOS ONEに論文として投稿中である。また、結果の一部を学会(9th Asia pacific Enterostomal Therapy Nurse Association Conference )に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた、下肢リンパ系の観察について、前集合リンパ管の観察を残すのみとなった。浮腫の作成技術を習得し、次年度に術後のリンパ経路の観察を行うための準備を整えることができた
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今後の研究の推進方策 |
明らかとなったリンパ系を元に、郭清が必要と考えられる鼠経リンパ節、膝下リンパ節、腸骨リンパ節を郭清する。Nakajimaの方法を用いてリンパ節切除術を行い、必要があればリンパ管の結紮を追加する。手術後10、30、60日目の下肢周囲径、下肢体積を測定し、ICGによるリンパ流のうっ滞を確認する。次に、ラットの下肢外側皮膚、リンパ節郭清部やその周囲組織を採取し、組織学的評価を行う。組織学的評価は、先行研究に従い、リンパ管内皮細胞マーカーで染色する。術後のリンパ経路を、正常ラットと比較し、その違いをICG画像と解剖、ホールマウント、組織透明化手法による観察を用いて立体的に把握し、より効果的なSLD開発に向けた示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金の生じた状況としては、COVID-19により、実験施設への立ち入りができず、実験を行えなかった時期があった。 翌年度は、ラットの20匹の購入、飼育のための経費(飼料、床敷)が必要である。下肢リンパ浮腫の評価を行うための組織観察では、組織を包埋するための試薬や凍結切片作成のためのドライアイス、スライドガラスなどの消耗品を要する。また、術後のリンパ経路観察のためにICG、EBが必要になる。リンパ浮腫作成手術を行うには、麻酔薬、縫合糸、ガーゼ、消毒液等の消耗品が必要になる。痛み止めと抗菌薬、染色液を注射するために、注射器と注射針を用いるため取れらの購入が必要となる。
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