2021年度は、研究の第2段階として、正常ラットの下肢リンパ系とリンパ遮断後に生じた迂回路の比較を行った。リンパ流の遮断は、腸骨リンパ節切除後に鼠経リンパ節・膝下リンパ節切除とリンパ管結紮を行う方法を用いた。迂回路はICGを用いた赤外線カメラでの観察とリンパ管染色による肉眼的な観察、組織観察を行うことで確認した。 上記方法でリンパ流を遮断したが、ラットの下肢腫脹は継続しなかった。また、リンパ遮断後の下肢のリンパを運搬するための3種類の迂回路が確認された。それぞれ、ラット側腹を走行する集合リンパ管へ合流する経路、ラットの傍正中を走行する集合リンパ管へ合流する経路、手術側とは反対側の鼠経リンパ節へ向かう経路だった。これらの経路のうち後の2つは、正常なラットの下肢のリンパ運搬(鼠経リンパ節を介して側腹の集合リンパ管へ向かう経路、大腿リンパ管へ合流する経路、表在リンパ管と深部リンパ管の交通路、膝下リンパ節へ向かう経路)には関係していない経路だった。また、組織観察では内腔の拡大した前集合リンパ管が観察された。これらのことから、迂回路を形成するリンパ管は前集合リンパ管であることが考えられた。そのため、前集合リンパ管の形態や構造の把握によってさらに迂回路の特徴把握を行うことができると考えられる。 今回明らかになった結果は、PLOS ONEに論文として掲載された。また、結果の一部は学会(9th Asia pacific Enterostomal Therapy Nurse Association Conference )に発表した。
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