本研究の目的は、認知症のある高齢入院患者(以下、認知症高齢患者)に生じる攻撃的行動を予防するための看護介入モデルを作成することである。本年度は、はじめに既存の攻撃的行動モデルおよび先行研究の結果から本研究における認知症高齢患者の攻撃的行動の枠組みを作成した。 近年、認知症の行動・心理症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)という言葉が用いられることでスティグマが生じやすくなり、「脳の疾患による症状」と誤解されることが懸念されている。その結果、必要なケアが見過ごされてしまう恐れもある。攻撃的行動の場合も、暴言や暴力といった事象のイメージが本人とのかかわりやケアのしかたに影響する可能性があると考えられたが、先行研究からはこの観点が確認されなかった。そこで、改めて攻撃的行動が生じる要因と援助についてインタビュー調査を実施した。老人看護専門看護師6名を対象とした半構造化インタビューの結果から、認知症高齢患者の攻撃的行動が生じる背景として看護師のもつスティグマが関連するという新たな結果が明らかにされた。研究者が実施した先行研究と本研究の結果を統合して、看護介入モデルを作成した。「攻撃的行動」という用語は、ケア提供者側のとらえ方であり事象の本質を見失いやすいことや、スティグマを誘引する恐れもある。よって、「攻撃的行動」という表現を、今後は「暴言暴力ととらえられやすい言動」に改めることとした。作成した看護介入モデルを実践で活用するために、ケーススタディを実施し評価・修正することがこれからの課題である。
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