研究課題/領域番号 |
20K23240
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研究機関 | 岐阜保健大学 |
研究代表者 |
小野 悟 岐阜保健大学, 看護学部, 講師 (80884171)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 衝動性 / 行動化 / トラウマインフォームドケア |
研究実績の概要 |
2020年5~6月に方法1「精神症状が不安定で行動化の見られる患者の思いや体験の把握」を実施した。対象は病棟看護師長と相談し、対象病棟に入院中で精神症状が不安定で行動化のある患者で研究同意の得られた3名とし、①現在の治療や看護についての受け止め②疾患や症状、困っていること③治療や看護に対する期待について、筆者が個別に半構造化面接を実施した。診断名は統合失調症と統合失調感情障害で、いずれの患者も幻聴や妄想などの精神症状が不安定で、医師や看護師に対する衝動的な暴言や暴力、多飲水行動による意識障害などの行動化の見られる患者であった。 対象患者の発言内容をデータとして患者の思いや体験について分析し、幻覚や妄想による違和感や不安があり、何が現実で何が現実でないのかが分からないという体験をしており、暴力はしていないのに医療者に信じてもらえない、隔離されていることのつらさや苦しさを看護師に分かって欲しいという思いを抱えていることが分かった。 2020年7~8月に方法2「対象病棟における精神症状が不安定で行動化の見られる患者の看護の現状と課題の明確化」を実施した。方法1で得られた結果を受け持ち看護師が参加できるカンファレンスにおいて提示し、病棟看護師が実践している看護、工夫していること、困難に感じること、必要とされる看護について話し合った。聴き取った内容は逐語録を作成し、データが語る内容について要約を作成し分析した。 その結果、患者の行動や言動、反応から調子がいいか悪いかを判断する、調子のいい時には見守り本人のペースに合わせて対応する、患者に選択してもらうかかわりや一緒に進めていく姿勢を示すなどの看護師の工夫と共に、調子の判断が非常に難しいことやマンパワー不足への懸念がリスク判断や業務負担の増加を憂慮してケアが進まないという課題もあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の発出に伴って、2020年12月中旬~対象施設の感染症対応により、外部者の立ち入りが制限された。3月の緊急事態宣言解除後も感染症対応が継続されたため、対象病棟に立ち入ることができず、研究実施は4月まで一時中断となったため、方法3の具体的看護実践方法の考案と実施、評価についての実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年4月に入り研究活動の再開に向けて、対象施設と実施可能な研究方法について検討を重ね、オンラインでカンファレンスをさせて頂くこと、プライバシーの確保、個人情報の取り扱いなどについて研究計画書の倫理事項、対象施設の倫理規定を遵守して行うことについて調整し、対象施設の承認を得た。 また、研究方法の変更(オンラインを活用したカンファレンス実施)に伴って再度大学の倫理審査を受けた後に再開する予定である。 その後、研究方法3「精神症状が不安定で行動化のみられる患者の看護実践方法の検討」、研究方法4「考案した看護実践方法の実践と評価」、研究方法5「精神症状が不安定で行動化の見られる患者の思いや体験に基づいた看護実践の成果の把握」を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴って、2020年12月中旬から2021年4月まで対象施設の感染対策に伴って、立ち入ることができなくなり研究が中断した期間があったため、当初予定していた旅費、人件費(謝金)を使用する機会がなくなってしまったために、使用額に差が生じている。 次年度はオンラインでのカンファレンス実施に伴って、研究活動が再開できるため、オンラインでの実施に必要な物品の確保と、研究参加して頂いた方、分析にご協力頂いた方への人件費、学会発表に関する費用として使用させて頂く予定としている。
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