最終年度には、これまでに把握した患者のニーズの把握(方法Ⅰ)、病棟スタッフのカンファレンスから見出した実践上の課題(方法Ⅱ)をもとに、方法Ⅲとして「巡視時など声をかけやすいタイミングで声をかけてみる」「患者の調子のよいと判断できる時に世間話などの何気ない会話をしてみる」など6つの具体的実践方法を考案した。 方法Ⅳでは具体的実践方法を対象病棟で実践した。対象者は取り組みについて【開放時間が延びると他心通(幻聴)で聞いたのに、看護師が部屋に戻そうとするから抵抗して椅子を振り上げた】、【急に引っ張られると怖くなって暴れてしまうが、どうしたの?と話を聞いてもらうことで落ち着いた】との評価があった。看護師は【かかわる機会や一緒にいる時間が増えたことで、思いを表現できるようになり、患者の体験がわかるようになった】、【暴力の背景にある思いや体験がわかると対象理解が変わり、かかわり方を教えてもらえると安心できる】などの評価があった。 方法Ⅴでは取り組みの成果の把握を行い、【丁寧に聞いていくことで行動の背景にある思いや体験がわかると理解して対応することができる】、【暴力のある患者としてではなく、一人の人として見ることで患者理解が深まりかかわりやすくなった】などがあった。 精神症状が不安定で行動化の見られる患者の背景にある思いや体験に寄り添う看護のあり方とは、調子が良いと判断できる時にはかかわりの中で患者との関係性を構築し、患者の思いを引き出すかかわりを継続すること、引き出した思いから行動の背景にある思いや体験を理解してケアの方向性を考えていくことである。その中では患者とのかかわりの中で得た情報やアセスメントの共有、悩みや不安を表現できるスタッフ間のコミュニケーションがチームで実践したケアや患者の反応を振り返りながら前向きにかかわりを継続・発展させていく重要な要素となる。
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