糖尿病神経障害(diabetic polyneuropathy: DPN)は糖尿病患者のQOL(Quality of life)を著しく低下させるにも関わらず、患者と医療者との間にDPNに対する認識のギャップがあり、特に疼痛管理が十分ではない。このような状況に対応するための治療は不可欠であるが、医療費増大が問題視される中、DPN治療は長期に渡ると考えられるため、その治療にはより費用対効果に優れた薬剤の選択が求められる。これまでのDPN治療薬の費用効果分析にはQOLや効用値などにデータ不足や、反映方法にも課題があった。 2022年は本研究の最終年度であったことから、2021年に行った学会報告を基にこれまでの研究の総括を医療経済評価のレビューという形でまとめた。当初、日本での費用効果分析に不足するデータを、利用可能なデータのモデル化によって補う計画であったが、臨床試験/費用効果分析のレビューや、Country adaptation/尺度変換モデルの検討を通し、これらの手法に限界のあること、最終的には評価を踏まえた日本での臨床研究の実施や、日常診療でのQOLやutilityの把握、そして把握したデータを研究に生かせる体制作りが望まれることを示した。
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