タイの農業従事者に対して、身体機能と転倒災害の発生との関連性を評価した。タイ北部ナン県の40歳以上の農業従事者454人を対象に調査を実施し、419人が解析対象となった。身体機能の評価には、日本で開発された身体測定5項目で構成される「転倒等災害リスク評価セルフチェック」を使用した。解析には、多重ロジスティック回帰とROC曲線を用いた。解析の結果、対象者の25.5%が過去12ヶ月間に職業性転倒を経験していることが明らかとなった。身体検査5項目のそれぞれについて、身体機能と職業性転倒の経験との間に有意な関連は見られなかった。また,5つの身体機能項目のそれぞれについて,ROC曲線下面積は0.60未満であった.50歳以上の参加者に限定して解析した場合も同様の傾向がみられた。 本研究では、タイの中高年農家における各検査の身体機能と職業性転倒の経験との関連は明らかにされなかった。農業における転倒発生機序は複雑であるため、転倒災害防止には複数の介入アプローチが重要であると考えられた。
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