本研究は我が国において高齢者に対するポリファーマシー(多剤併用)を解消する際の阻害要因・促進要因についてまとめ、それを解消する実装戦略を構想する際に基礎資料とすることを目的としている。本研究では特にがん領域におけるポリファーマシーの原因となる薬剤の一つとして、低リスク患者へのがん化学療法誘発性悪心・嘔吐に対する予防的制吐療法(Chemotherapy induced nausea and vomiting: CINV)が挙げられ、それに着目した。これは、米国癌治療学会をはじめとする各種診療ガイドラインや患者にとって有益ではない低価値な医療をリストとして示したChoosing Wiselyの推奨リストの一つとして含まれている。しかし、実際のプラクティスでは、現場でも使用されていることの多い薬物療法・支持療法として知られており、それを減らすための有効な戦略(実装戦略)を作り上げることが求められている。そのような不必要な予防的制吐療法を減らす際の阻害要因・促進要因についての調査として、2020年度に翻訳した「実装科学のための統合フレームワーク[Consolidated Framework for Implementation Research :CFIR」を用いて、2021年度には実際に質的インタビュー調査を実施し、現在そのデータの収集を行った。2022年度はそれを解析し、論文化を試みている。
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