本研究では,歩行中のTLAの改善に適した言語教示法の確立に向けて,健常人にて適切な言語教示法を検討して基礎データを蓄積し,その後,症例を対象に臨床での効果を検討することを計画していた。 2020年度には,歩行中のTLAを改善させる適切な言語教示の方法の検討を行った。TLAの改善を目的とした言語教示を数種類与えて歩行練習を実施し,教示を与える前後,歩行中の関節運動などを身体部位7か所(骨盤,両大腿,両下腿,両足部)に装着したウェアラブルセンサー(慣性センサー(Mtw,Xsens社製))を用いて計測し,各教示の効果を比較検討した。歩行パラメータは,慣性センサー(加速度,角速度,センサーの位置情報,傾斜角度)のデータからTLA,関節運動・加速度などを算出した。健常成人を対象とした検討では,TLAや足関節底屈角度の増加に伴う歩行速度の即時的な増加を認めた。歩行中の関節運動を指導することで歩容の変化に伴い歩行速度が増加することが示唆され,成果を2021年10月に開催された日本基礎理学療法学術大会で報告した。 2021年度には,足関節底屈角度・TLAを指標としたウェアラブルセンサーを用いた歩行のフィードバックによる介入効果の検討を行った。ウェアラブルセンサーを用いて計測した足関節底屈角度・TLAを指標としたリアルタイムの歩行のフィードバックをPCからの音声による教示を利用した歩行練習を実施し,効果検証を行った。対象者は,下肢機能低下を有する入院患者1例での検討となったが,歩行練習の前後で関節角度の変化に伴う歩行速度増加を認めた。関節運動に関しては,TLAでの反応が良い症例であったため,身体機能等を加味したフィードバックの指標を検討する必要性が示唆された。今後も継続して症例を蓄積し,フィードバックの指標に適した歩行パラメータの検討,長期的な介入効果の検討を行う予定である。
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