本研究では頸髄損傷モデルを作成し、受傷後早期から呼吸筋トレーニングを実施することで、横隔神経運動ニューロンの形態学的特徴がどのように変化するかを解析することを目的とした。 ラットは横隔神経運動ニューロンよりも上位の第2頸髄と第3頸髄の間で左半切除を行った。偽手術群では同様の手順で椎弓切除まで行った。術後は鎮痛薬の投与や加温、水分補給などで愛護的にケアを行い、モデル作成後48時間から72時間経過して十分に回復していることを確認してトレーニングを実施した。トレーニングはチャンバー内に高二酸化炭素の混合ガスを投与して過換気状態にすることで行った。週に4回から5回の頻度で3週間実施した。頸髄損傷から3週間経過後、左横隔神経を露出してその断端をHorseradish peroxidase(HRP)に浸すことで取り込ませ、2日間の生存期間をおいた後に潅流固定した。潅流固定後は凍結切片で連続切片を作成し、TetramethylbenzidineにてHRPを発色させた。運動ニューロンは光学顕微鏡にて切片を観察し、解析ソフトによって外周にあてはまる楕円の長短径、断面積、推定表面積を解析した。 頸髄損傷群、頸髄損傷+トレーニング群、偽手術群、偽手術+トレーニング群を比較するとサイズの形態学的データはすべて頸髄損傷群のみで有意に縮小していることが明らかになった。これらの結果から頸髄損傷後の呼吸トレーニングは横隔神経運動ニューロンの縮小を抑制する可能性が示唆された
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