研究課題/領域番号 |
20K23258
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
持田 淳美 (齋藤) 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (80709022)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | KATPチャネル / Kir6.2 / ストレス / 情動 / 不安 / グリベンクラミド / クロマカリム / かんぴょう |
研究実績の概要 |
本研究ではまず、非ストレス下におけるKATPチャネル調節薬の影響について検討するため、マウスにKATPチャネル開口薬であるクロマカリム及び閉口薬であるグリベンクラミドを脳室内投与し、情動性及び不安感受性への影響について行動学的試験に従い検討した。その結果、クロマカリムでは情動性の低下が、グリベンクラミドでは不安様行動が惹起されることを確認した。このことから、表現型は異なるものの、カリウムチャネル調節薬が情動調節に関与している可能性が示唆された。 次に、急性ストレスに対するグリベンクラミドの効果について検討するため、グリベンクラミドを脳室内投与したマウスに急性拘束ストレス刺激を負荷した後、行動学的試験に従い検討した。しかし、脳室内投与による負荷が大きいためか、行動試験の結果が安定せず、急性ストレス刺激に対するグリベンクラミドの効果について検討するまでに至らなかった。また、ストレス適応モデル及びストレス非適応モデルに対するグリベンクラミドの脳室内慢性投与の効果についても検討したが、同様の理由により、慢性ストレス刺激に対するグリベンクラミドの効果について検討するまでに至らなかった。 そこで、薬物を脳室内投与から負荷の少ない腹腔内投与へ投与経路を変更し、再度検討を行った。まず、急性ストレスに対するグリベンクラミドの効果について検討するために、グリベンクラミドを腹腔内投与したマウスに急性ストレス刺激を負荷した後、行動学的試験に従い検討を行ったが、急性ストレス刺激に対してグリベンクラミドの腹腔内投与は何ら影響を及ぼさなかった。しかし、非ストレス下において、グリベンクラミドを腹腔内投与することにより、脳室内投与と同様に不安様行動が惹起された。このことから、グリベンクラミドの不安感受性亢進作用は、投与経路によらず惹起されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記載した通り、薬物の脳内への直接的な影響について検討するため、薬物を脳室内に投与し実験を行ったが、非ストレス下における検討は行えたものの、そこにストレスが加わると、脳室内投与の負荷が反映されてしまい、安定した結果を得ることができなかった。そのため、投与経路を負荷の少ない腹腔内投与へ変更して再度検討をし直したため、予定より研究が進行しなかった。また、コロナ禍で慢性実験が途中で中断される可能性があり、あまり実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初、クロマカリムが急性的なストレス応答や慢性ストレスによる適応障害に有効であるか検証する予定であったが、非ストレス下においてクロマカリムを投与すると、ストレス非適応モデル作成の指標となるホールボード試験において情動性の低下が認められた。そのため、非ストレス下ではホールボード試験に影響を及ぼさないグリベンクラミドによる検討が妥当であると考え、急性的なストレス応答やストレス適応モデルに対するグリベンクラミドの効果を検討することとした。また、脳サンプルを採取し、ストレス応答に重要なセロトニン神経系及びドパミン神経系などを中心としたタンパク質及び遺伝子発現の変化をWestern blot法及びPCR法に従い検討を行うことで、その分子メカニズムの解明を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、コロナ禍で慢性実験を組むことが難しかった。また、KATPチャネル調節薬の脳内への直接的な影響を検討するために脳室内投与での実験を試みたが、予想以上に脳室内投与による負荷がかかってしまい、ストレスに対する薬物の影響を検討するまでに至らず、腹腔内投与へ投与経路を変更して検討をし直した。したがって、本年度の検討のために見積もっていた各種消耗品の費用を次年度へ繰り越すこととした。なお、本来、次年度実施予定だった実験については、本年度に実施予定の課題と同時並行で実施し、可能な限り早期から着手するように努める。
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