研究課題
本研究では、情動調節およびストレス応答におけるATP感受性チャネルの役割に着目し、ATP感受性カリウムチャネル調節薬が急性的なストレス応答や慢性ストレスによる適応障害に及ぼす影響について検討した。まず、ATP感受性カリウムチャネル閉口薬であるグリベンクラミドが非ストレス下において情動行動に及ぼす影響について検討を行ったが、何ら影響を及ぼさなかった。次に、急性ストレスに対するグリベンクラミドの効果について検討を行ったが、何ら影響を及ぼさなかった。さらに、1日1回1時間または4時間の拘束ストレス刺激を14日間負荷したストレス適応および非適応モデルに対するグリベンクラミドの影響について検討を行ったが、何ら影響を及ぼさなかった。そこで、ATP感受性カリウムチャネル開口薬であるジアゾキシドについて、グリベンクラミドと同様に検討を行った。その結果、非ストレス下、急性ストレスおよびストレス非適応モデルにおいてジアゾキシドは何ら影響を及ぼさなかったが、ストレス適応モデルマウスに対してはジアゾキシド(20mg/kg)を投与することにより、ストレス適応の形成が障害される傾向が認められた。また、これらの行動学的結果の詳細なメカニズムについて検討する上で、ターゲット分子を探索する目的で、ATP感受性カリウムチャネル構成サブユニットのひとつであるKir6.2遺伝子欠損(Kir6.2KO)マウスを用いて、ドパミン神経機能に及ぼす影響について検討を行った。その結果、Kir6.2KOマウスにおいて、脳内ドパミンD1受容体タンパク質発現量の増加とアポモルヒネ投与により誘発される自発運動量の亢進の減弱が認められた。以上より、ストレス適応形成機構にATP感受性カリウムチャネルが一部関与している可能性が示唆された。今後、その詳細なメカニズムについて、ドパミン神経系の機能を中心に検討していく必要があると考える。
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