本研究目的は体幹筋運動単位の興奮特性を用いて脳卒中患者姿勢調節における神経変調を解明することであった。神経学に基づくリハビリテーションを加速させるために、患者計測まで実施することが研究計画の完遂には必要である。当該年度は、健常成人での予備的検討を受け、急性期脳卒中患者に対する検証を進めた。 前年度に引き続き、当該年度前半も患者計測は困難な状態であった。しかし、徐々に新型コロナウイルス感染拡大状況が落ち着き、患者計測に取り掛かれるようになった。計測は進められたものの、症例数は5例に留まり統計学的解析には進めなかった。成果発表についても、予備検討結果について学術大会で発表するにとどまった。 具体的に得られた研究結果の概要として、急性期脳卒中患者の一部症例で、姿勢保持中に腰背筋に与えた神経筋電気刺激の周波数(10~20 [Hz])に呼応した運動単位の変調が観察できた。これは、健常成人に見られない反応であった。重症で姿勢保持がままならない者にもこのような対応関係は見られなかったが、比較的軽症例で姿勢保持が自立している者に同様の対応関係が見られたのは貴重な知見であった。運動単位の変調を外部刺激により操作できたのは治療に貢献する知見である一方、それが大規模に検証できなかった点、姿勢反応として外界と調和した形で表象されるか不明な点など課題は残った。 研究費用を利用した実験機器の購入については満了したものの、費用が掛からない形での患者計測・論文発表については期間満了後も継続する。
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