研究実績の概要 |
2021年度は若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせが高齢期のサルコペニアおよび骨格筋機能に与える影響を検討した。 文京区在住の高齢者を対象とした観察型コホート研究“Bunkyo Health Study”のベースライン測定に参加した65~84歳の男女1607名(男性679名、女性928名)のデータを解析対象とした。アジアサルコペニアワーキンググループのサルコペニア診断基準2019を参考に、サルコペニア、低筋量、低筋力パフォーマンスを定義した。思い出し法による運動習慣のアンケート調査結果を基に、対象者を中学校または高等学校と現在の運動習慣の有無との組み合わせにより若年なし-現在なし(NN群)、若年なし-現在あり(NA 群)、若年あり-現在なし(AN群)、若年あり-現在あり(AA群)の4群に分けた。NN群を参照群とした際の各群のサルコペニア、低筋量、低筋力パフォーマンスの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰分析により算出した。 男性ではNN群に対してNA群、AN群では有意な差はなかったが、AA群でサルコペニア(OR: 0.29, 95%CI: 0.09-0.98, P = 0.046)、低筋量(OR: 0.23, 95%CI: 0.10-0.57, P = 0.001)、低筋力パフォーマンス(OR: 0.53, 95%CI: 0.29-0.98, P = 0.042)のオッズ比が有意に低かった。女性でもNN群に対してNA群、AN群で有意な差はなかったが、AA群では低筋力パフォーマンス(OR: 0.47, 95%CI: 0.27-0.82, P = 0.008)のオッズ比が有意に低かった。 本研究の結果、若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせは高齢期の骨格筋機能と関連し、特に男性ではサルコペニアの有病率の低値とも関連する可能性が示された。
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