研究実績の概要 |
脳卒中後に上肢運動麻痺を呈した成人患者における動作レベルを, 9軸加速度計を用いた運動学的変数で表現する臨床研究が継続された. 上肢運動能力の評価ツールとしてゴールドスタンダードとして認識されている Action Research Arm Test(ARAT)に対して, 我々はポータブル人体装着型多軸センサーを使用することで, 「他人と共有されない場合のある主観的」運動学的変化を「多くの医療者間で共有されやすい客観的な運 動学的変数」に置き代える試みを継続している. 研究補助期間全体においては, 新型コロナウイルス感染症拡大によりデータ取得施設でのデータ収集は遅延したが, 今年度(最終年度)においては, 累計30名のデータ取得を完了することできた. 現在, 検討を進めている主な運動学的変数は, 加速度, 角度速度, 関節可動域で, 対象に設置した8個の9軸加速度センサー個別の情報と, それらを組み合わせて算出した, 頚部の屈曲・伸展, 頚部の側屈, 頚部の回旋, 腰椎の屈曲・伸展, 腰椎の側屈, 腰椎の回旋, 胸椎の屈曲・伸展, 胸椎の側屈, 胸椎の回旋, 肘関節の屈曲・ 伸展, 肩関節の屈曲・伸展, 肩関節の外転・内転, 肩関節の外旋・内旋, 手関節の屈曲・伸展, 手関節の橈屈・伸展, 前腕関節の回内・回外の動きについて検討を進めている. 特に, ARATの掴み系課題(Grasp)に関しては, 肩屈曲、肘伸展, 骨盤の前傾・側屈、肘関節の屈曲, 肩関節の内旋などが, ARAT得点 の増減と関与する可能性を確認している. また, ARATの握り系課題(Grip)に関しては骨盤の前傾, そして前腕関節の回内・回外, 手関節の屈曲・伸展の動きが ARAT得点の増減と関与する可能性を確認している. 今後は, データを固定し, 統計学的処理後に, 学会報告する予定である.
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