研究実績の概要 |
本研究の最終的な目標は,温熱刺激による筋肥大メカニズムを解明し,運動トレーニングに変わる新たな筋肥大方法として臨床応用への発展を目指すことである.近年,温熱刺激はタンパク合成経路を活性化させることが示されている.しかしながら,そのメカニズムは未解明であり,臨床現場において筋肥大目的に温熱療法を適応し成功した例は無い.本研究は温熱刺激による筋肥大における温度感受性チャネルの機能的意義を解明し、温熱療法の臨床応用に向け新たな知見を提供すること目的としている. 本年度は遅筋と速筋を対象に,温熱刺激による筋肥大の効果を検討した.これまでの研究により,筋細胞内のカルシウムイオン緩衝能力は遅筋と速筋で異なることが報告されている.温度感受性チャネルから放出されるカルシムイオンが温熱刺激による筋肥大のメカニズムでると考えられるため,緩衝能力の高い遅筋と遅筋では温熱刺激に対する応答が異なる可能性がある.そこで遅筋であるヒラメ筋と速筋である長趾伸筋を用いて温熱刺激負荷後の細胞内カルシウムイオン濃度及び筋肥大シグナル伝達物質の活性を生化学的な手法により計測した.その結果,温度感受性チャネルは速筋と比較し遅筋で多く,温熱刺激負荷後の筋肥大シグナルの活性は早筋で高いことが示唆された.これらの知見は臨床における筋肥大を目的とした温熱刺激利用において, 対象とする筋選択する必要性を示唆するものである.
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