食生活の欧米化に伴い、本邦でも非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の有病率が増加している。NAFLDは、非進行性の単純性脂肪肝と、肝臓の線維化とともに肝硬変や肝癌を合併する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とに分類される。NAFLDからNASHへの病態進展機序は明らかにされておらず、その解明は急務である。 以前、申請者は、わずか4日間の高脂肪食摂取が、肝内の炎症や凝固状態を誘導することで、NASHの超早期段階の病態を呈することを証明した。そこで、高脂肪食と同様にNAFLDの原因となる高糖質食の短期的な摂取も、NASHへの進展のリスク因子であるという仮説を立て、短期間の高糖質食の負荷が肝障害刺激の感受性に与える影響を調査した。2020年度に行った研究により、短期間の高糖質食摂取においても、高脂肪食摂取時と同様に肝障害刺激に対する感受性が亢進していることが明らかとなった。一方で、高脂肪食と高糖質食の摂取時では、肝内に誘導される炎症・凝固状態のバランスに差があるため、短期的な食餌の変化が肝感受性の亢進に及ぼすメカニズムは両餌で異なる可能性が示唆された。2021年度は、データの再現性を検証すると共に、これらの研究成果を論文としてまとめ英文雑誌に投稿を開始した。また、短期高脂肪食モデルおよび短期高糖質食モデルの血清・肝臓中の代謝物解析を行っており、今後はいくつかの代謝物と炎症・凝固との関わりを追求していく。
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