研究実績の概要 |
[本年度の目的: 脳卒中発症モデル動物に対する脳血管機能評価のタイムコースの決定と評価指標の習得・開発] 今年度は, まず初めに, 脳卒中易発症モデルラット (SHRSP)12匹を購入し, 所属する施設の飼育環境において, 概ねどの位の週齢にて脳卒中が発症し始めるのか, さらに脳卒中が発症した場合の兆候について検討する事を目的とした. また, 脳血管機能のin vivo評価指標として, 脳血管造影検査による血管径の評価および, 超音波エコー検査による血流速や血流波形の評価手法の確立を目的とした. さらに, SHRSPに対する適切な運動介入の方法も検討した. [実施内容] 4週齢の脳卒中易発症モデルラットを購入し, 専用の餌を与えて飼育すると, 13週齢以降より脳卒中様の痙攣発作, 活動量低下, 麻痺, 食餌量の減少, 飲水量の増加等が出現し始める事が明らかとなった. 以上の結果より, 身体運動が脳血管機能に与える影響を調べるためには, 多くの動物が脳卒中を発症する以前の12週齢前後までを最終評価として設定することが妥当であると考えた. SHRSPに他の研究でもよく実施されているトレッドミル上での強制運動を実施させようとしたが, 積極的に運動させることが困難であったが, ケージ内に設置された回し車を用いた自発運動は積極的に実施する事が明らかとなった. また, in vivoにおける脳血管拡張の評価テストとして, 二酸化炭素を吸気した際や, 体血圧を低下させた際の脳血管径の増加, 脳血管血流速度の増加を, X線血管造影装置や超音波断層装置を用いて検討し, その際の酸素や二酸化炭素など血中ガスの適切な管理方法を確立できた. また, 当初の予定にはなかった超音波断層装置を用いた血管機能評価を確立でき, in vivoにおける脳血管機能の評価を概ね確立する事ができたと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は, 脳血管機能のin vivo評価指標としての, 脳血管造影検査 (血管径の評価), 超音波エコー検査 (流速や血流波形の評価)を用いた手法の確立に少し時間を費やした. 今年度中に脳卒中発症モデル動物と正常血圧モデルにおいて, sedentaryな状態のin vivo脳血管機能評価を終了させておきたいところであった. しかし, 当初の予定にはなかった超音波断層装置を用いた血管機能評価を評価体形に組み込む事ができた点では予想以上の進展があったと考える. in vivo脳血管機能評価の手法は定まり, 今後は本手法等を用いて, 身体運動が脳血管内皮機能に与える影響を検討する事ができるため, 遅れを十分に取り戻せると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 脳卒中発症モデル動物 (SHRSP)と正常血圧モデル (WKY)におけるsedentary群の, in vivo脳血管機能評価を終了させ, 積極的な運動を実施した群 (exercise群)との比較を実施する. さらに, ex vivoにおける血管機能評価の手法を速やかに確立させるように努力し, in vivoとex vivoの両面から身体運動が脳血管機能に与える影響を検討して本研究の目的を達成する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では当初の予定として, トレッドミルを用いた強制運動介入を予定していた. しかし, 本研究で使用する脳卒中易発症モデル (SHRSP)は, 多くの実験で用いられるwistarラット等と比較して, トレッドミル上では積極的に運動を実施する事が困難であった. したがって, 当初の研究計画にはなかったが, トレッドミル上での運動の代わりに, ラットが自由に自発運動が可能なホイール付きのケージを購入し, 自発運動を行わせる事にした. 今年度の繰越金をケージ購入費用に当てる.
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