脳卒中発症は脳血管拡張能の低下と関連する事が知られている。本研究は、日常的な運動習慣が脳卒中易発性高血圧自然発症ラット (SHRSP)の脳動脈拡張機能に与える影響を検討するものである。前年度の実験より、SHRSPはトレッドミル上の運動を思うように実施してくれず、精神的ストレスがかかっている兆候が認められた。 そこで今年度の実験は、ケージ内に回転車を設置し、自発的に運動を実施させる事にした。その結果、運動したSHRSPの体血圧は大きな変化は認められなかったが、運動開始6週間後に血管造影を実施して運動群と非運動実施群の画像を比較すると、正常二酸化炭素濃度時の状態と高二酸化炭素血症時の状態において、中大脳動脈直径は非運動群の動物と比較して運動実施群の動脈径がより拡大している事が明らかとなった。また、血管内皮に由来するタンパク質 (CD31)に対する免疫染色を実施した結果、脳実質内の毛細血管床密度の大きな変化は認めらていない。 以上の結果は、適切な運動習慣が、たとえ体血圧上昇を抑制できない場合でも、脳血管の収縮作用を抑制し、脳卒中や血管性認知症の予防に役立つ可能性を示唆している。 また、経頭蓋超音波ドップラー法を用いて、末梢血管抵抗と関連すると考えられる、Pulsatiliy indexがSHRSPにおいては、想定外の挙動変化を示す事が分かった。この点に関しては、今後、引き続き、詳細を検討していく予定である。
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