研究課題/領域番号 |
20K23285
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上野 雄己 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (70793397)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | レジリエンス / 身体活動 / 精神的健康 / 横断調査 / 縦断調査 |
研究実績の概要 |
緊急事態宣言の影響もあり,当初予定した調査が行えなかったため,令和2年度では,2つの既存データを一部利用して,身体活動とレジリエンスの関係を予備的に検討した。この調査における身体活動とは,運動的側面であり,生活活動(家事や通勤などの日常生活活動)は含まれない。 まず,一つ目として,全国15―90歳の日本人13,072名を対象にした横断調査のデータを使用して,居住地域間の影響を考慮した,運動習慣とレジリエンスの関係を検討した。分析の結果,社会人口統計学的要因や生活習慣,病歴を統制しても,個人レベルの運動習慣がレジリエンスに対し正の関連が示され,居住地域レベルの運動習慣がレジリエンスに対しても関連が確認された。 次に,二つ目として,全国20―69歳の日本人1,284名を対象にした縦断調査(約2年間間隔の2時点)のデータを使用して,運動量とレジリエンス,人生に対する満足度の関係を検討した。分析の結果,運動量(1波)から人生に対する満足度(2波)に対して直接的な関連は示されず,運動量(1波)がレジリエンス(2波)を介して,人生に対する満足度(2波)に影響をもたらす間接的経路が確認された。 以上の結果より,運動習慣や運動量はレジリエンスと概ね,関係を示すことが明らかとなり,レジリエンス増強の手立てに運動が有効である可能性が示された。さらに,レジリエンスを媒介要因とすることで,個人のWell-beingの向上にも繋がることが示唆された。これらの結果は,国外の研究結果とも一致しており,日本人においても同様に,レジリエンスに対する運動の影響が高いことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を進めるにあたり,所属機関の倫理審査専門委員会に申請を行い,横断調査・縦断調査ともに,調査実施の承認は得ている。しかしながら,1月に発令された緊急事態宣言の影響もあり,調査に遅れが生じている。本研究では,身体活動を主たる変数としており,外出自粛制限は個人の身体活動レベルに大きな影響ををもたらすと言える。こうした状況で調査を行っても,適切なデータは取得できない可能性が高い。そのため,令和2年度では既存のデータを利用して,身体活動の運動的側面とレジリエンスの関係について検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
身体活動の運動的側面とレジリエンスは概ね関係することが明らかにされたが,生活活動の側面は検討できなかったこと,また身体活動がレジリエンス増強をもたらす経路は複数考えられ,令和2年度に実施予定であった調査を早急に行う必要がある。そのため,令和3年度は,令和2年度に実施できなかった調査を緊急事態宣言解除後に速やかに実施し,分析を行う予定である。また,並行して,令和3年度に実施予定である縦断調査も行い,身体活動がもたらすレジリエンス増強のメカニズムを横断的・縦断的に検討することである。なお,調査終了後は,データの解析と論文執筆を行い,その成果を国内外の学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月に発令された緊急事態宣言の影響もあり,令和2年度に予定した調査が行えなかった。そのため,その調査費用を令和3年度に繰り越しし,早急に調査を行う予定である。加えて,令和3年度では事前に調査計画された縦断調査を行うこと,また得られたデータを使用して,国際誌に投稿する予定である。なお,本年度は調査費用ならびに研究成果報告費用に多く計上する予定である。
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