研究実績の概要 |
令和4年度は,令和3年度より実施している縦断調査を継続し約1年間のデータを収集し解析を行い,また既存の大規模縦断調査のデータを使用して運動習慣の効果について再検討した。これらの概要および知見を以下にまとめた。 1.全国30―59歳の日本人579名を対象とした5波(約3カ月間隔)の縦断調査のデータを使用して,身体活動とレジリエンスの関連を検討した。固定効果モデルによる分析の結果,身体活動の移動(通勤や通学,買い物,送迎など)の変化がレジリエンスの獲得的要因の変化に対し正の関連が示された。一方で,仕事(家事や学業,アルバイトなども含む)や余暇活動(スポーツや運動,レクリエーションなど)では関連が確認されず,横断調査で得られた知見とは異なり,身体活動の効果の多様性について慎重に解釈する必要があることが指摘された。 2.全国20―79歳の日本人4,621名を対象とした4波(約1年間隔)の縦断調査のデータを使用して,運動習慣とレジリエンスの関連を検討した。条件付き潜在成長曲線モデルによる分析の結果,レジリエンスの切片と傾きに有意な関連が見られた説明変数として,切片では年齢と性別,教育レベル,運動習慣,朝食摂取頻度,飲酒経験であり,すべて正の関連であった。またレジリエンスの傾きと関連が認められた説明変数は性別と運動習慣であり,いずれも負の関連が確認された。すなわち,ベースラインの運動習慣の高い人ほど,その後のレジリエンスが低下していることを示し,上記の結果と同様に継続的な調査が求められる。
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