今年度は新たなB-SES刺激条件を設定し,不活動性筋痛に対する効果検証を行うとともに,筋萎縮の発生状況やマクロファージの動態,NGF含有量の変化について検索し,その生物学的機序を昨年度得られた対照群,不動群,B-SES①群の結果と比較検討した.分析対象は8週齢のWistar系雄性ラット9匹で,不動期間中に両側下肢筋群に対して周波数50Hz,強度4.7mA,刺激頻度1:1(2秒収縮,2秒休止),通電時間15分の刺激条件で1回/日の頻度でB-SES介入を行い(B-SES②群),実験期間中における腓腹筋の筋圧痛覚閾値を評価した.実験期間終了後は腓腹筋を採取し,試料の一部はELISA法にてNGF含有量を測定した.また,試料の一部から凍結横断切片を作製し,マクロファージのマーカーであるCD11bやジストロフィンに対する免疫組織化学染色を行い,筋線維100本あたりのマクロファージ数ならびに筋線維横断面積を計測した.結果,筋圧痛覚閾値は不動1週後から実験群の3群は対照群より有意に低値を示したが,B-SES①・②群は不動群より有意に高値で,この状況は不動2週後も同様であった.NGF含有量は実験群の3群は対照群より有意に高値を示したが,B-SES①・②群は不動群よりも有意に低値であった.一方,実験群の3群のマクロファージ数は対照群より有意に高値を,筋線維横断面積は有意に低値を示し,不動群とB-SES②群の間には有意差を認めた.以上の結果から,B-SES介入は不活動性筋痛を軽減し,この機序には骨格筋内におけるNGFの発現抑制が関与している可能性が示唆された.そして,今回の条件のB-SES介入では,B-SES②群でのみ筋萎縮やマクロファージの集積に効果を認めたことから,筋萎縮の進行抑制の有無に関わらず,骨格筋への頻回な刺激入力が不活動性筋痛の軽減効果に作用しているのではないかと推察される.
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