研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、生活習慣の欧米化に伴い我が国の肝疾患の中でも最も高頻度となった非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の80~90%を占める、慢性炎症性肝疾患である。NASHは著しいアルコールの摂取がないにも関わらずアルコール性肝炎類似の肝組織所見を呈し、進行すると肝臓における炎症から肝細胞が傷害され、肝臓の線維化を引き起こし、高率に肝硬変や肝臓癌に至る可能性のある疾患であるが、その発症進展のメカニズムについては未だに明らかになっていない。先行研究において、メチオニン・コリン欠乏食投与により作製したNASHモデルマウスで血小板型12-リポキシゲナーゼが上昇すること、この酵素が中心的な役割を果たす肝星細胞に局在し、NASH進展における肝星細胞の活性化と筋線維芽細胞への分化に伴って、その発現レベルが上昇することが明らかとなった。そこで本研究は肝星細胞においてNASH進展に寄与する血小板型12-リポキシゲナーゼの発現調節機構を解明することを目的とする。ヒト肝星細胞株において、血小板型12-リポキシゲナーゼの発現が認められなかったため、マウスから肝星細胞の初代培養細胞を調製し、そこへ肝線維化の機構に関わる各種サイトカインを添加し、血小板型12-リポキシゲナーゼのmRNAをqPCRで定量することにより、本酵素の発現を調節するサイトカインを検討した。その結果、いくつかの候補となるサイトカインを見出し、そのサイトカインのシグナル伝達機構について検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
血小板型12-リポキシゲナーゼの発現を調節するサイトカインの候補を見出し、おおむね申請書に記載したように研究が遂行できているため。
これまでと同様にサイトカインのシグナル伝達機構を一つずつ調べていくことで、本酵素の標的となる経路を同定する。また、同定された経路で血小板型12-リポキシゲナーゼ遺伝子の転写活性が変化するかを確認し、発現調節に寄与する転写因子を同定する予定である。
前年度までに購入した物品や試薬のストックが残っていたため。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、研究成果発表のための旅費の支出がなかった。次年度では、物品の購入費、論文の校正費などに使用する予定である。
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